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インタビュー

LOUIS XIV


 ルイ14世って知ってる? フランスのブルボン王朝最盛期を、気取ったカツラを被って支配した王様のことだ。ヴェルサイユ宮殿を建てたのは有名だけど、バレエと妖精が大好きで、ある舞台で〈太陽〉役を演じたことから〈太陽王〉と呼ばれた。そんなグラマラスな王様にリスペクトを捧げたロック・バンドが、ジェイソン・ヒル率いる〈ルイ・ザ・フォーティーンス〉だ。さっそくツアー中のジェイソンにバンド名の由来を訊いてみよう。ジェイソン?

「あー、こちらはいまデトロイトだ。デトロイトの場末。道の真ん中で携帯で喋ってる。どこか近くに飲み屋でもないかな(笑)。で、ルイ14世のことだけど、最初のアルバムをパリ郊外に住んでる友達の家で作った時に閃いたんだ。自分をルイ14世だと思いこんでるティーンエイジャーの話にしようってね。それにルイ14世はヴェルサイユを作ったくらいの壮大なアイデアの持ち主だから、世界制覇も狙っていたと思うんだ。同じように世界制覇をめざしている俺たちには、ピッタリのバンド名だろ?」(以下同)。

 フランス→ルイ14世→世界制覇。この無敵の飛躍力(妄想力)に支えられて、バンドは新作『The Best Little Secrets Are Kept』でメジャー・デビューを果たした。70年代のUKロックからの影響を色濃く感じさせる本作は、官能的なストリングスがクモの巣のように張り巡らされるなか、ソリッドなギター・サウンドがナイフみたいに斬りつけてくる。それはまるで、ガレージ仕掛けのグラム・ロックだ。

「俺たちはなによりも〈ナマ〉な音を大切にしてるんだ。それに俺はヴィンテージな機材が大好きなのさ。ヴィンテージなアンプに、ヴィンテージなギター。そしてなによりストリングスだね。あの響きは最高だよ! ビートルズみたいに、ストリングスを巧みにフィーチャーしたサウンドに惹かれるんだ。歌詞はダーティーでも、サウンドはジェントルマンでいたいのさ」。

 アルバムでは「俺たちの原点というべきパワフルなナンバー」“Luis XIV”から、「自分がこれまで音楽から受けてきた感動を伝えた」“Ball Of Twine”まで、マーク・ボランの亡霊やオジー・オズボーンの生き霊を引き連れたロックンロール・サーカスが、息つくヒマもなく濃密に展開していく。

「コンセプトはずばり、セックスだ。ロックンロールといえばセックスだろう? なのに最近じゃあそういうことを歌うバンドは少なくなってしまった。楽しいことといえば、S-E-X。俺の頭の中をそのまま歌にすると、あちこちにセックスが登場するのは仕方ないんだ。いつもそればっかり考えてるんだから!!」。

 デトロイトの道の真ん中でセックスを叫ぶ。この衝動はホンモノだ。愛や希望も大切だけど、そこに抑えきれない衝動がなければ、それは気の利いたスピーチにしかすぎない。

「音楽がなかったら俺はただの落ちこぼれさ。いろんなことがあったけど、11歳の時に初めてEコードを押さえた時から、俺には音楽しかないと思ってた」。

 そんな感傷も、このバンドだったらドラマになる。彼らこそは「最近増えてきた粗悪なロック・バンド」に立ち向かう、ロックンロールの王政復古主義者たちなのだ。闘いはこれからだ!

「とにかく〈サマー・ソニック〉で来日できるのを楽しみにしてるよ。みんなでいっしょに盛り上がろうぜ! それに俺って、アジア系の女の子には目がないんだよな。ちっちゃな女の子が大好きでさ……」。

PROFILE

ルイ14世
2003年4月にサンディエゴで結成。ジェイソン・ヒル(ヴォーカル/ギター/ピアノ)、ブライアン・カーシグ (ギター/ピアノ)、マーク・マイガード(ドラムス)、ジミー・アームブラスト(ベース)から成る4人組。精力的なライヴ活動を行いながら、同年にLP盤『Louis XIV』をパイナップルからリリース。地元のラジオ局から強力なバックアップを受ける。2004年にアトランティックと契約を結び、ファースト・シングル“Finding Out True Love Is Blind”をリリース。同曲のプロモ・クリップがMTVで繰り返しオンエアされて話題を集める。このたびメジャー・デビュー・アルバム『The Best Little Secrets Are Kept』(Atlantic/ワーナー)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年07月21日 13:00

更新: 2005年07月21日 19:16

ソース: 『bounce』 266号(2005/6/25)

文/村尾 泰郎