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インタビュー

THE REDWALLS


 いや~、コイツはぶったまげた! シカゴから飛び出した平均年齢21歳(!)の4人組、レッドウォ-ルズによるメジャー・デビュー・アルバム『De Nova』のことである。その音楽性は70'sロックンロール・バンドを彷彿とさせる、どころかほぼ完全に〈70's〉そのまんまの超懐古主義的サウンド! 「プレイしてて楽しいんだもん。すこぶるゴキゲンさ」(ロ-ガン・バレン:以下同)とのことだが、ここまでくるともはや奇跡に近い。シ-ラカンス発見以来の衝撃である。70'sテイストの〈ロックンロール〉を演奏する連中はいまどき珍しくもないが、そうしたバンドのほとんどは〈ガレ-ジ〉や〈パンク〉、そうでなければ〈ハ-ド・ロック〉という言葉に置き換えられる。けれどコイツらは違う。彼らが奏でるのは、黒光りするグル-ヴ感を持ちつつも白人的なノリを身上とした、シンプル極まりない〈ロックンロール〉。他に変換不能の〈ロックンロール〉だ。つまりそれは、ローリング・ストーンズ、スモール・フェイセズ、モット・ザ・フープルなどの系譜に位置づけられるものである。

「彼らはグレイトなバンドだから、もちろんそこからヒントをもらったこともある。でも俺らは俺らのやりたいことをやっているだけさ。プレイしたいことをプレイしてるんだ」。

 確かに純正なロックンロール・バンドの流れを受け継ぎながらも、決してそれだけではない。なぜなら、すこぶるキャッチーなメロディー、驚くほどバッチリ息の合ったハーモニー、そうしたポップな要素も彼らの大きな魅力のひとつであるからだ。特にアルバムの中でも一際異彩を放つ、簡素で美しいサイケデリア感覚に包まれたバラード“Hang Up On The Way I'm Feeling”は素晴らしい。

「とてもレイドバックしてるし、アルバムの中でもズバ抜けてメロウだよね。出来にはマジで満足してる。こういうナンバーも俺たちのスタイルからはずれているわけじゃないんだ」。

 こうしたポップ・サイドが強調された曲からは前述のバンド以上に、彼らのもう一方のアイドルであるビートルズの影響が感じられる。個人的にはそのアプロ-チの仕方がオアシスに近いように思えて(そういや歌唱法もちょいリアム・ギャラガー似だ)興味深い。

「今回のアルバムはメジャー・レーベルからの第1弾だったから、全体的に勢いのある、アップ・ビートでアグレッシヴなものにしたかったんだ。でも次作にはメロウな曲がもっと入ると思うよ」。

 ところで、ここまでに挙げてきた彼らのサウンドの鍵を握るバンドの多くがイギリスのグループということからもわかるとおり、彼らの音楽には不思議とイギリス産のバンドに似た雰囲気が漂っている。

「う~ん、どこの国の音楽かってのは関係ないな。グレイトなバンドはグレイトなんだよ」。

 では逆に、偉大な先人を多く輩出した故郷シカゴという土地からの影響はないのだろうか?

「シカゴは労働者階級の街で、俺たちはそこの出身だし、そのことに対して誇りを持っているけど、シカゴという土地柄にインスパイアされていまやってるような音楽が生まれたとは思わないな」。

 そうした発言を踏まえてみると、本場アメリカのブルースやリズム&ブルースへの憧憬から生まれた70's英国流ロックンロ-ルと、(いかにも20代前半らしく)ニルヴァ-ナあたりからロックのル-ツを遡っていった彼らの音楽観は、ひょっとすると〈ル-ツ・ミュ-ジックへの距離感〉という点で同等なのかもしれない。もっとも、彼ら自身はそんなことまるで意識してないだろうが……。

「とにかく、いまやりたいことをやってるだけさ。それが最高なんだ」。

 これだけ無自覚でありながら、往年のグレイトなバンドたちとタメをはるロックンロ-ルをしっかりブチかましてるんだから、頼もしすぎるぜ、レッドウォ-ルズ!

PROFILE

レッドウォールズ
兄弟であるローガン・バレン(ヴォーカル、ギター)、ジャスティン・バレン(ヴォーカル、ベース)と幼馴染みのアンドリュー・ランガー(ヴォーカル、ギター)が、レッドウォールズの母体となるバンドをシカゴで結成。そこにベン・グリーノ(ドラムス)が加わるかたちで現在の4人編成となる。地元のバーなどで精力的にライヴ活動を行い、2003年にアンダートウよりファースト・アルバム『Universal Blues』をリリース。その後、ルーニー、クリス・ロビンソンと共に全米ツアーを行う。2004年、ジャスティンとアンドリューが高校を卒業すると同時にキャピトルと契約。このたびメジャー・デビュー・アルバム『De Nova』(Capitol/東芝EMI)を7月6日にリリースする。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年07月21日 13:00

更新: 2005年07月21日 19:16

ソース: 『bounce』 266号(2005/6/25)

文/北爪 啓之