マウントシュガー
飾らずに、力まずに。原点に立ち戻った、歌とギターが奏でる素朴さ。風にそよぐようなニュー・アルバムが完成!!
〈雨が止んだら/聞きとれやすくなる言葉を/君にだけあげる〉(“雨によく似た光”)。誰にでもまっすぐに伝わるバリアフリーな言葉選びにあって、確実に胸を突き刺してくる歌詞/歌声に、甘みやほろ苦さ、時には夜の匂いを与えるナチュラルなギター・サウンド。森英臣(ギター)と山里亜理沙(ヴォーカル)のふたりからなるmount sugarの4作目にして初のフル・アルバム『ハルノワ』は、いつにも増してカラフルかつグレイスフル。新録も含むこれまでの代表曲と新曲で構成された〈ベスト・オブ・ベスト〉なメロディーが、ゆったりとキープされるリズムのなかを、とても伸び伸びと泳いでいる。
「周りから〈もっと速い曲をやったら?〉と言われたこともあって、そういう曲が世の中にとって必要なんだって思い込んじゃった時期もありました(笑)。でも、そんな試行錯誤のなか、本当にたくさんのライヴを重ねることで、ようやく今回〈ギターと歌で届けたい〉という初期のコンセプトに立ち戻れた気がしているんです。たとえテンポはゆっくりでも僕の心はモッシュしてますし(笑)、『ハルノワ』は〈僕らの全部をそのまま〉という会心作になったと思います」(森)。
「出し切った、という感じですね。これでまた次に進めるぞっていう。ヴォーカルを録音するときもライヴでの気持ちを思い出しながら歌いましたし、歌詞にしてもいまは自分のなかから自然と湧き出るものをそのまま歌えている感覚で、書くことが楽しくてしかたがないんです。大学ノート何十冊分という(歌詞の)ストックも、ダンボールごと奥にしまってしまいましたね」(山里)。
ちょうどそれと同時期に、森もハードディスクの打ち込みデータを大幅にシェイプアップしていたという。つまりは自分たちの欲しい音がより明確になり、必要以上のデコレーションが外れた結果、いちばん美味しい部分が残った、ということ。
「九州で毎年春にやっている〈CAFEWEEK〉というイヴェントがあって、それは演劇だったり自主映画だったり音楽を地元のカフェ40店鋪ぐらいの店内で表現するというものなんですね。僕らもそれに出演させてもらったんですけど、そこで演奏するのが本当に楽しかったんです。みんな温かい人ばかりだったし、それぞれで表現の方法は違えど、気持ちは輪のように繋がっていて」(森)。
「タイトルの『ハルノワ』は、漢字だと〈春の輪〉って書くんです。その輪のなかで、私たちは飾り立てるということをしないし、自分たちそのままの音楽ができていると思うんです」(山里)。