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インタビュー

LEELA JAMES


「永遠の名作と見なされる音楽、偽りのない誠実さを評価されるような音楽を作っていきたいわ。そう、アル・グリーンみたいな音楽を。自分のスタイルを作り上げて、彼の声にあるようなソウルを自分なりに打ち出していきたいの。それって買うこともできなければ、努力して学べるものでもなくて、自分の内側になければ出てこないものなのよ。〈ソウル〉は真実のもの。無理して作ったものじゃないし、偽りでもこじつけでもないの」。

 そう語るのは、先頃の『A Change Is Gonna Come』でアルバム・デビューを果たしたリーラ・ジェイムス。彼女の内側の奥深くから湧き出るような、ディープでブルージーで印象的な歌声を一度でも耳にすれば、この言葉が十二分に説得力のあるものだと納得できるに違いない。

「幼い頃は教会で歌っていたの。初めて教会のステージに立ったのが11歳の時。歌いはじめたら自由な気分になったわ」。

 ソウル・ミュージックが大好きで、先述のアル・グリーンをはじめ、マイティ・クラウズ・オブ・ジョイ、スピナーズ、ステイプル・シンガーズ、シャーリー・シーザー……といった先達の曲を聴いて育った彼女。とはいえ、「ただの〈良い思い出〉以上のものを自分の音楽で表現したい」と話しているように、アルバム中のほとんどの曲は彼女自身のペンによるものだ。

「高校の英語の授業中は教室の片隅でいつも歌詞を書いていたわ。書いてて興奮しちゃって、大声で歌い出したこともあったな。音楽はいつも私の後ろに控えていて、セラピーの役目をしていたのよね」。

 しかし、当時の彼女がめざしていたのはシンガーではなく、短距離走者だったという。走ってばかりの毎日が続いたが、ある日膝の負傷によりその夢が断たれてしまったのだそう。その時、いままで感情を解き放つためのものだった〈音楽〉が彼女の生活の中心となったのだ。その後、高校の先生の薦めでバック・シンガーの仕事やガールズ・グループのメンバーを経験するも、結果的に彼女が選んだのはソロ・アーティストとしての活動だった。

「ゴスペルやブルースのシンガーが持っているようなエッセンスに強く惹かれていった。グループでやっていた音楽とはまったく違うものを感じはじめていたのね。そういった音楽は、苦痛や悲しみの多くを取り除いてくれるんだもの。私にとって歌とは、他の方法だと外に出すことのできない内面を解き放つための表現だと言えるかも。私の歌は叫びなのよ」。

 アルバムに先駆けてリリースされた“Good Time”で共演したピート・ロック&CL・スムースもそうだが、そんな彼女の歌声にまるで吸い寄せられたかのように集結した面々……カニエ・ウェストやラファエル・サディーク、ジェイムズ・ポイザー、ワイクリフ・ジョンといったプロデューサー陣が腕によりをかけて制作したトラックの同時代性と、「人の心に触れる本物の歌声と、身体に染み付くような忘れがたいメロディー」が見事な融合を見せた今作は、リーラ本人にとっても単なるファースト・アルバムの何十倍も意味があるものだろう。アルバム・タイトルにもなっているサム・クックの名曲をカヴァーしたのも、そういうことなのかもしれない。

「“A Change Is Gonna Come”はどうしてもやりたかった。自分の人生と音楽について感じていることがこの曲に集約されているから。私がここまで来るのには長い時間がかかったし、音楽が昔のような良さを取り戻すのにも長い時間がかかった。この曲を通じて、ようやくその時が来たことを私なりに感謝しているの」。

 その時は来た。そして、これから先もまだまだ長い。でも、彼女なら大丈夫――そう確信させてくれるほど力強く、真っ直ぐ前を見据えた大型新人アーティストの登場だ。

PROFILE

リーラ・ジェイムス
LA出身。幼い頃から70年代ソウルに親しみ、地元の教会で歌いはじめる。高校時代には陸上競技のスプリンターとしての道を志すが、怪我によって挫折。その後ふたたび音楽に開眼し、ソングライティングを続けながらセッション・シンガーとしてノーマン・ブラウンらの作品に参加している。一時はグループで活動していたが、ソロ・アーティストを志向して離脱。2003年にシングル“Long Time Coming”でデビューし、続く“Good Time”が話題となってワーナーと契約。ピート・ロック“No Tears”への客演を挟み、シングル“Music”でメジャー・デビューを果たす。このたびファースト・アルバム『A Change Is Gonna Come』(Warner Bros./ワーナー)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年08月04日 13:00

更新: 2005年08月04日 17:44

ソース: 『bounce』 267号(2005/7/25)

文/佐藤 ともえ