U-DOU & PLATY
沖縄民謡とダンスホールのチャンプルー? コンシャス・チューンもアゲ曲もお任せあれのオキナワン・レゲエが登場だ! で、そのお味のほどは……!?
あ、やられた――沖縄出身のダンスホール・デュオ、U-DOU&PLATYを初めて聴いたとき、そう思った。沖縄民謡をダンスホールとごく自然に溶け合わせ、リリックで使われる言葉もウチナーグチ(沖縄の方言)。その〈ごく自然に〉というところが重要なのであって、意図的にその融合を試みようとしたって胡散臭いものになるだけだ。なにしろ沖縄民謡ファンとレゲエ・ファンはそのあたりにうるさい連中ばかりだからね。で、そんな彼らがコンビを組んだのは98年頃。地元のクラブ〈バナナ・ジャマイカ〉でわずか数人の客を前にパフォーマンスを始めた。スーパーキャットやタイガーに影響を受けて活動をスタートさせた2人は、三木道山やNANJAMANを聴いて「日本でもこういうことができるんだ!って思った」(U-DOU)。ウチナーグチを使い始めたのは2000年代に入ってからのことだ。
「やっぱり自分らにしかない色を付けたくて。それに日頃使ってる言葉なんで、そんなに違和感はなかった。周りのみんなもおもしろがってくれましたね」(PLATY)。
だが、彼らのスタンスをよりオキナワン・ルーツに向けさせたのは、意外にも本土出身のプロデューサー、B.P.からの影響だった。彼はJAP jamなどのレーベルから多くの名曲を送り出してきた人物で、ジャパニーズ・レゲエの歴史を語るうえでは欠かせない人物だ。
「4年ぐらい前にB.P.さんが沖縄に住みはじめたんですよ。で、どうせだったら地元の人をフィーチャーしようって思ったみたいで、レゲエのトラックに三線が入ったオケをくれて。彼が言ってたのは、〈アイデンティティーを大切にして、リリックには絶対血が通っている音楽を作らないといけない〉っていうこと」(PLATY)。
B.P.から学んだことはそれだけではない。
「客観的に見た沖縄をズバッと言ってくれる。矛盾や問題についてもね」(PLATY)。
「知ってはいたんだけど、そこまで深くはね……いまではもう、深く考えるようになってますけど」(U-DOU)。
このたびリリースされた彼らのファースト・アルバム『Vibes UP』のなかに“ワジワジする”という曲がある。ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ“Small Axe”オケを使用したこの曲は、金武町で米兵が起こした事件について歌ったもの。“コザ暴動”と題されたスキットも入っている。
「コザ暴動の時の実況を聴いて、友達にマネしてもらって。その実況はもっとグロかったんですよ、本当は。ヘリコプターが突っ込んだときの、総決起大会の大学生の意見を入れたりしたんですね。僕のオヤジの話も使ったりして。そのほうがリアルだから(笑)」(PLATY)。
「意固地にならずポジティヴに。現実的に俺らにしかできないことだから」(U-DOU)。
もちろんこのアルバムはそれだけじゃない。よく練り上げられた2人のコンビネーションはダンスホールの楽しさを存分に伝えるものであって、ギャル・チューン/ラヴソングからパーティー・チューンまでを現場感覚いっぱいに表現している。「7年間の集大成ですね」というPLATYの言葉は嘘じゃないだろう。ジャマイカの現行シーンを横見しつつ、自分たちにしか歌えない歌を紡ごうとしている彼ら。その影響はこんなところにも現れはじめている。
「レゲエのイヴェントで方言をわざと使う子が多くなってきてるんですよ」(PLATY)。
「そうそう、喋るときも歌うときも……それがあたりまえになってきてるんですよね」(U-DOU)。
〈それってすごく嬉しいことですよね?〉と訊ねると、2人はピッカピカの笑顔で「そうですね」と答えてくれた。陽気でナチュラルでコンシャスでオリジナル。そんな2人の影響力は今後島の外にも拡がっていきそうだ。
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