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インタビュー

SMUJJI


「正直、あんなにヒットすると思わなかったよ。自分の曲じゃないから〈さて、ガツンと歌って帰るか〉って程度でさ。ファイヤは可愛くておもしろかったから、仕事は楽しかったけどね。おかげさまで女の子のファンも増えて、女性大好きのオレとしては嬉しい悲鳴を上げてるよ」。

 アーバン・ソカの貴公子、スマッジ。UKダンスホール・レゲエの3人娘=ファイヤのヒット曲“Must Be Love”に参加して一躍脚光を浴びた男。いまでも2週間に1度はクラブでせっせとナンパに励むという23歳である。待望のファースト・アルバム『True Colours』を完成させて、ますます鼻息が荒い。

「これがスマッジの音楽だって自信を持って言えるよ。プロデューサーも楽曲も最高の作品さ。レコーディングはオレの人生でもっとも楽しい出来事のひとつとなったね。UKやUS、ジャマイカなどいろんな国のプロデューサーと仕事をして学ぶところも大きかった。レゲエ、R&B、ポップ、ソカ、バラードとジャンルを超越したサウンドで、あえて言うなら〈ウィッティー、リアル、アーバンで力強い音楽〉かな。これ以上ホットなアルバムはないと思うぜ。タイトルの『True Colours』は〈ありのままの姿〉ってこと。お仕着せの自分じゃなくて本当の自分を表現したよ。自分の感じたままにね。だから夏はこれでバッチリ踊ってくれよ!」。

 そう語るとおりにサマー仕様のアップ・チューンはもちろん、シルキーな歌唱を堪能できるメロディアスなミッド・チューンまで充実した今作。“Must Be Love”のスマッジ・ヴァージョンも目玉だ。制作では主に作詞を担当。例によってギャルネタ満載で、そのリアルさが際立っている。

「歌詞のほとんどは女性に向けられたものさ。オレがいちばん愛情を感じている対象はズバリ女性だからね。もちろん男性が聴いても楽しめる内容だと思うよ。だって奴らもオレみたいに女性が大好きだろうから。いやマジメな話、オレは自分に嘘をつきたくないんだよ。例えば〈君とセックスしたい〉と思っている時に〈君を愛してる〉というのは間違ってる。オレだったら絶対正直に〈君とセックスしたい〉と言うね。それぐらいオレは嘘が大嫌いなんだ」。

 正論なのかそうでないのか、よくわからない持論を力説するスマッジには、チャーミングでどこか憎めないところがある。ケヴィン・リトルやルピーが導いたソカ現象の延長線上で語られることも多いが、当人にそのつもりはなさそうだ。

「オレとしては柔軟性や多様性が最大の持ち味だと思ってる。さまざまなスタイルの音楽をやるからね。逆にそのせいで〈こいつは何のアーティストだ? 何がやりたいんだ?〉と混乱を招いて、マイナスになってしまうこともあるんだけど。だいたいオレはソカのアーティストでもレゲエのアーティストでもR&Bのアーティストでもないし。単にアーティストとして息の長い活動をしたいと思っているだけさ」。

 レゲトンやらダンスホールやら、カリブ系サウンドはソカ以外でも人気上昇中だ。ジャマイカ出身の彼にもまた純粋な使命感がある。

「素晴らしい流れだし、こういう音楽が注目されて本当に嬉しく思うよ。ちょっと前までは全然メインストリームじゃなかっただろ? でも最近は多くの人に聴かれるようになってきてるし、ますます発展させていきたいね。オレもカリブ系音楽の発展に大きく貢献できるといいな、なんて思っているよ」。

 デビュー前、自分をポップスターに仕立てようとしたレコード会社とあっさり縁を切って新天地に移籍。この『True Colours』はそこで彼が完成させた、嘘偽りのない正直なアルバムだ。硬軟併せ持ったアツイ男、それがスマッジ。滑らかな美声と固い信念、女性への並々ならぬ興味を武器に〈オレ流〉で勝ち上がっていくに違いない。

PROFILE

スマッジ
ジャマイカ出身のシンガー/ソングライター。11歳の時にロンドンに移住し、俳優を志望して16歳から芸能学校に通うなか、チャリティー・イヴェントでボーイズIIメンの楽曲を歌ったことをきっかけに歌に目覚める。その後、職を転々としながらシンガーへの道をめざし、2003年にジャムダウンと契約。ファイヤの“Must Be Love”にフィーチャーされたことで注目を集め、2004年にデフ・ジャムUKより“K.O.”でメジャー・デビューを果たす。方向性の食い違いによって同レーベルを離れた後も、エステル“Free”のリミックスなどを手掛けつつ自身のレコーディングを継続。ファースト・アルバム『True Colours』(Jamdown/東芝EMI)を7月27日に日本先行でリリースする。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年08月18日 11:00

更新: 2005年08月18日 17:21

ソース: 『bounce』 267号(2005/7/25)

文/梅岡 彩友美