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インタビュー

the guitar plus me

郊外から届く新しいトーン……柔らかさと毒気を併せ持つ新感覚のシンガー・ソングライター


 気の遠くなるような透明なサウンド。ライヴではその名の通りギターとヴォーカルのみで、その場に異空間を作り上げてしまうthe guitar plus meのニュー・アルバム『NEWTOWN NEWTONE』は、これまでのFINE TUNING!からのリリースやコンピ『ROCK MOTOWN』などで見せていた、パンク/エモ的なフィールドからの評価の高かった作風から、一歩ポップなフィールドに踏み出した印象がある。もちろん、限りなくシンプルなサウンド・メイキングに変わりはないのだが、シオザワヨウイチ a.k.a. the guitar plus meの言葉を借りるならば「風通しがいい感じ」。その透徹した空気の原点が、実はカントリーにあったというのは驚きだ。

「最初は普通の、ドラムがあってベースがある宅録をやってたんですけれど、カントリーを聴きだして、ギター1本でベースと上モノのメロディーを弾くこと(チキン・ピッキング奏法)ができるようになったので、ライヴもひとりでできるようになるし、音源ではリズム感を出しながら音数を減らすことができる。で、1回削ってしまったところから必要であればさらに音を加えるようにしているんです。それと影響を受けたのは〈カントリーは白人のヒップホップだ〉っていわれる脚韻の踏み方ですね」。

 新作はジャケットのアートワークにも現れているように、彼が一貫してテーマとしてきた〈NEWTOWN〉をモチーフに、ショッピング・モールの人工的な美しさのごときクリーンな音が奏でられる。現実とフィクション、時制もバラバラなストーリーが、音色そしてリリックの双方で重層的に組み合わさっていく。

「なるべく聴きやすく、歌詞はなるべく酷いことを(笑)。ただそれを気持ち良いものとして捉えてもらっても全然構わなくて。ただ、よく歌詞を読んだら〈なんだこれ!〉って思ってもらえれば」。

 その歌詞の世界は、彼が敬愛するスティーリー・ダン(しかも70~80年代ではなく、近年の作品)の近未来的世界観や予測不可能な展開に通じるものがあり、過激なシニシズムとグローバリズム批判が混在する。

「途中で急に〈飛田給〉という言葉が出てきたり、ごちゃごちゃになっていて、サバーバンな場所にいろんな風景が混ざっていく感じにしたかった」 。

 どこまでも溶けていく優しい声には、驚くほどの棘が隠されている。郊外都市で繰り広げられる、残酷なまでに美しいポップス。〈NEWTO-WN NEWTONEへようこそ〉とこのアルバムが誘う先は、果たして……?
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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年08月18日 12:00

更新: 2005年08月18日 17:31

ソース: 『bounce』 267号(2005/7/25)

文/駒井 憲嗣