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インタビュー

Da.Me.Records

驚異的なヴァイタリティーで傑作を重ねる噂のレーベルは……本当にダメなんですか?


「〈これはなんなんだろう〉っていうのがヒップホップのいかがわしさ、パワーの根源的な魅力。日本のヒップホップはハナからポップスの体をなしてチャートの世界に入ってったからショックはなかったけど、いま一般の人にも聴いてほしいなら豪速球ばりのパワーで〈異物感〉〈違和感〉を投げつけるしかないと思う」。

 そう語るダースレイダーを中心にメテオ(SMRYTRPS)、環ROYらが中核となって始まったレーベル=Da.Me.Recordsは、ヒップホップもまた音楽として抱えていたはずの得体の知れぬ初期衝動を、一連のリリースでパッケージングしてきた。とりわけ、ミックス作業の知識もないまま自宅にレコーディング機材を揃え、録音環境を整えたところに始まって現在に至るまで、レーベル作品のトラックメイク/エンジニアリングの大半を務めてきたダースレイダーの動きはそうした〈異物〉そのものだ。一連のレーベル作品に付けられた¥1,000というアルバム価格と共に、それを〈遊びの延長〉と呼ぶのは簡単だが、そんな〈遊び〉が続くのは何より彼のタフさの証明であり、そのことが音楽の値打ちを¥1,000以上のものとしている。

「リー・ペリーにフランク・ザッパ、Pファンク……彼らの全盛期は毎日のように曲を録音して、その日の体調で出来が違うくらいの勢いがあった。USのラッパーもミックステープ・レヴェルで毎日のように録音してるわけだし、音楽が日常の〈食う寝る遊ぶ〉っていうラインにちゃんと入ってる。俺も前からビートはMPCで毎日作ってたし、ラップも毎日してたから不自然なことじゃなくて、みんなが例えばプレステやってるような時間にビート作ったりしてるだけ」。

 彼の2作目のソロ・アルバム『ガレージ男の魂』も、そんな日々の集積に他ならない。「世界レヴェルで見てこんなことやってる人はそんないないでしょ、っていう自負はある」という同作における、ラップとも歌ともつかぬヴォーカル表現(「ラップもヒップホップの表現方法のひとつにすぎない」)と、目に入ったいい音楽をすべて食らい尽くすよなサンプリングは、ルールにまみれて縮こまったヒップホップを解き放つ。8月には、13人のマイクリレー2曲を含むより〈ラップ・ファン向け〉なレーベル初のコンピ『ダメレコ・コンピ VOL.1~DEADLY METAL ROLLERCOASTER』をリリース。それに初のDVDリリースが続き、秋以降には大和民族、COMA-CHI、はなび、EI-ONEの各アルバムが控えるレーベルの活動は、ダースレイダー自身の活動と共にこれからますますその渦を大きくしていきそうだ。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年08月18日 12:00

更新: 2005年08月18日 17:20

ソース: 『bounce』 267号(2005/7/25)

文/一ノ木 裕之