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インタビュー

FLYING RHYTHMS


 Flying Rhythmsは久下惠生とラティール・シーの共演をきっかけとして始まり、ダブ・ミキサー/エンジニアとして内田直之が加わることで完成したユニットだ。2004年にファースト・アルバム『Flying Rhythms』を、2005年春にはHIFANA、MOODMAN、BLAST HEAD、ALTZといったアンダーグラウンドなクラブ・シーンで話題のメンツを起用したリミックス&セッション・アルバム『Rhythm Connection』をリリース。そして今、奇跡のトライアングルが生み出した、その名のとおり〈ブッとんだリズム〉が、ホンモノ志向の音好きの脳ミソに刻み込まれるのと同時に腰を直撃しちゃったのだ。そりゃあトンガった音を求めるクラブ・シーンでも人気急上昇ってのにも納得なワケだよ。

「僕は自分ひとりのために音楽をやってるミュージシャンじゃないから。ただ、自分たちがやっていることにはもちろん自信があったんだけど、もしかしたら自分たちしか楽しめないんじゃないか?とも思っていたんですよ。でも(前作を出してみたら)それは全然違って、予想以上にいろんな人が聴いてくれているなって感じてる」。

 自分たちしか楽しめない? そんなご謙遜を。このリズムの洪水を一度でも体験しちゃったら、当分はその残響で楽しめちゃうって。そうそう、今回メンバーを代表してインタヴューに答えてくれたのはラティール。アフリカはセネガル出身の彼はルーツにアフリカ音楽があるミュージシャンだ。

「昔は、こういう音楽をやるとはまったく思わなかった。頑固に、アフリカの音楽がいちばんだと思ってたから。ただルーツがアフリカで、それにプラスしてこういうのをやるとおもしろい」。

 彼らのセカンド・アルバム『N'DANKA N'DANKA』にはアフリカンなダンス・ナンバー“Assiko”をはじめとして、彼のそんなルーツからの影響が発揮された曲もある。とはいえFlying Rhythmsの魅力はそれだけではなくて、プラスされているものが間違いなくある。しかもそれがデカい。“Gallop”に見られる、ハイハット・ソロだけで曲を作り上げるような久下のドラム・テクニックに、“Home Away”などのディープな音響空間を作りあげる内田のエンジニアリング。プリミティヴで躍動感溢れるグルーヴと、計算されたかのような精密なリズム、そして研ぎ澄まされた音処理がぶつかり合う、この3人だからこそ生まれるケミストリー。そして完成したのがダビーでトランシー、でもって民族音楽的なこのアルバムだ。それにしても、このぶつかり合いは奇跡的としか言いようがない。

「僕はすごく自然に音楽をやってるから。みんな自然だからこそ(Flying Rhythmsとしての)ボーダーがまったく必要ない。(言葉はいらない?)そうだね。ステージではもちろん楽器でコミュニケーションしてるよ。(わかり合えてる?)全然、大丈夫ですよ(笑)。(事前には)なんにも決まってないけど、心はいっしょなんで。それにステージの上だと、もうやるしかないからね」。

 そう、これも強く言っておく。彼らの魅力は、ライヴだ。実際“Copacabana”はエイドリアン・シャーウッドの来日公演で行われた彼らのライヴ音源の一部である。ジャム・セッションで繰り広げられるそのライヴは一言、唖然! 口あんぐり。今作もそのライヴとの密接な関係のうえで自由に作り上げられたものなのだ。ルール無用の音楽? そうだよ。まあまあ、次の発言を読んでみてよ。

「(いつもライヴに向けての)リハはしないし、スタジオにも入らない。適当って思われるかもしれないけど……。でも最初は練習しようかな、とかいうのもあったんだけどね、だけどね……。今でも練習しようと思えばできるけど、決められたものになっちゃう。それが悪いことだとは思わないよ。でも、音楽は決められたことだけじゃない、と僕は言いたいんですよ」。

 最後に、『N'DANKA N'DANKA』は日本語だと〈ゆっくりゆっくり〉って意味ね。

PROFILE

Flying Rhythms
久下惠生(ドラムス/Eパッド)、ラティール・シー (パーカッション/ヴォイス)、内田直之(ダブ・ミックス/エンジニア)によるユニット。2002年にBLAST HEADが主催したイヴェントで久下とラティールがセッションしたのをきっかけに、2004年にアルバムのレコーディングを開始。これに内田が参加したことで3人が揃い、ユニットの結成となった。同年にファースト・アルバム『Flying Rhythms』をリリース、クラブ・シーンからロック・リスナーにまで一躍その名を轟かせる。2005年春にリリースしたリミックス・アルバム『Rhythm Connection』を経て、このたびセカンド・アルバム『N'DANKA N'DANKA』(時空/ラストラム)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年08月25日 11:00

更新: 2005年08月25日 19:43

ソース: 『bounce』 268号(2005/8/25)

文/池田 義昭