インタビュー

心G


 幼馴染みのPAPA TAKAと始めたレゲエのサウンド・クルー、BURNSONICで相模原を拠点に活動を開始。「セレクターをめざしたかったんですけど、ターンテーブルが買えなかった(笑)」ためにMCとしてマイクを握り、その後シンガーへと転向した経歴を持つのが今回アルバム・デビューを果たした心Gだ。こちらの質問に終始笑いを交えた気負いのない話しぶりで答える姿に人柄の良さを感じさせる彼は、みずから言うように「みんなと同じ普通の人」なのかもしれない。いくつかのコンピへの参加や客演を経てリリースされた彼のファースト・アルバム『真心』で歌われるのも、決して閉じた世界の話ではなく、自分の生活のなかから生まれくる、他の誰とでも共有しうるひとりの人間としての心根であり、世知辛い世にあって純粋なまでに生きることをまっとうしようという気持ちである。

「DJスタイルの人って他の人のフロウに乗せてうまく自分を出したりとかするじゃないですか。そういうのができないから歌うっていうのがあって、漠然と鼻歌まじりで出てくるものがだんだんと繋がって曲になっていく。いまもその延長でやってますね」。

 普段から交流のある多くのメンツに支えられて〈心G&フレンズ〉とでも言うようなテイストも感じられるアルバムは、まさに仲間と気持ちを共有することで生まれたものなのだろう。

「(参加メンツは)もともとずっと繋がってた人たち。シンガーを始めた頃からちょっとやってた曲とかもあって、そういうのもみんなとの繋がりのなかで曲として完成できたっていうのがうれしい」。

 そして、その成果はお互いがお互いを尊重した結果としても確認することができる。『真心』で見られる音作りの幅はそうした成果の表れであり、この部分でも彼の音楽は決して閉じたものにはなっていない。

「19歳ぐらいの時以来ジャマイカにはずっと行ってないし、レゲエだけにどっぷりハマってる生活でもないんです。どっちかっていうと、ヒップホップだったりドラムンベースをやっている仲間たちも多いし、そこは全然分けてないですね」。

 2003年のMINMIのツアーのバッキングを務めたダンスホール・バンド=SUPER TRUSHやレーベルの中心人物ともいうべきDJ SOMA、元Loop Junktionの3人が結成したCro-Magnon、GAKU-MCらのライヴDJとしての顔もあるという緑音ら、トラックを担当した仲間たちがさまざまな形で見せる音作りは、ぐっと間口の広い仕上がりを見せている。

「トラックメイカーによってはドラムンベースを作ってる人もいるし、バンドの人もいる。その人たちの色とか幅が出てほしかったし、みんなのいいところが失われなければいいなと思った。そういう意味ではみんなのなかのレゲエ、俺にとってはこれがレゲエだよっていうのを出してもらいましたね」。

 心Gの考えるレゲエ、それは「心、ハート」だという。アルバム『真心』も、てらいのない心で彼と仲間を、そして彼とリスナーを結ぶものと言えるだろう。

「ホントにひとりで作ったもんじゃない し、みんなと響き合ってちゃんとできたかなっていう。だから周りの仲間に感謝だし、自分だけじゃなくてみんなのいいところも詰まってるアルバムなんじゃないかなと思います」。

 このアルバムをどう感じるかはもちろん人それぞれだろうが、そこから温かいものを受け取ることは誰にでもできるはずだ。

PROFILE

心G
75年8月生まれ、山梨県出身。神奈川県相模原市を拠点に活動するレゲエ・シンガー。96年に幼馴染みのPAPA TAKAと共にBURNSONICを結成し、DJとして活動を開始するが、その後シンガーへと転向。相模原や町田を中心に精力的にライヴ活動を行う。2004年にはPUSHIMやPAPA-Bと並んでコンピ『ROCK the SKY -KAERU STUDIO GREATEST HITS-』に参加。今年2月、相模原で発足したNUFFMEKからリリースされたコンピ『NUFF REC』に“宴 ~Vibes Communication~”“まっしぐら”の2曲が収録される。6月には7インチEP“My Way”をリリース。さらなる話題を集めるなか、このたびファースト・アルバム『真心』(NUFFMEK)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年08月25日 11:00

更新: 2005年08月25日 19:51

ソース: 『bounce』 268号(2005/8/25)

文/一ノ木 裕之