cutman-booche
大阪から登場した、新感覚のブルースを鳴らす3人組。より広い景色を描く新作が完成!
〈ヒップホップ以降〉を存分に感じさせる躍動的なリズム、大阪らしいブルース乗りに溢れた塩辛いヴォーカル。cutman-boocheの標榜する〈boosoul(ブーソウル)〉との出会いは鮮烈だった。野性的でごつごつとした手触りの存在感のなかに、心の襞に忍び寄ってくるようなユルさ。彼らのセカンド・ミニ・アルバム『clisco line』では、その音楽の懐がさらに広がったのを感じられる。
「伝えたいものを強く持っているメンバーが(曲の)ベースを持ってきて、そこからみんなで完成させていくという形がより濃くなった」(金佑龍、ヴォーカル/ギター) 。
ウッドベース、ヴォーカル/ギター、ドラムスというタイトな編成から、ピアノやコーラスなど新たなサウンドの可能性への意欲的な挑戦。ワイルドなギターとウッドベースが印象的な“Beyond words”といった曲では、下町の風情を思わせた前作『cutman-booche』に比べると、より乾いた空気や大陸的な風景を想起させる。
「みんな大人になってるし、表現者としてより大きなところを見た面もある。旅や遠征ライヴもたくさんして、いろんな社会を見て、そこで見えたこととかも含めて」(林周作、ウッドベース)。
「自分たちと近い音楽には敏感なときもあります。ラジオとかでかかってると〈お! また新しい強敵が出たぞ!〉って(笑)。尊敬の念を込めてね」(小宮山純平、ドラムス)。
そう語るように、〈ブルースの新しい解釈〉や〈サーフ・ミュージック〉といった2005年のキーワードを持ち出してみれば、そうしたアコースティックでかつグルーヴ感を持つアーティストたちにも通じる、なんとものどかな風情がある。結婚する友人へのはなむけを歌った“時つ唄”をはじめ、cutman-boocheの奏でる音には音楽への愛情で繋がれた、飾らない和気あいあいとしたムードがある。それではプレイボタンを押して、〈clisco〉なる架空の街への旅の記録をいっしょに辿ってみよう。
「僕らは〈clisco〉へ向かって、人生と個々のプライヴェートなものも共有してて。前に旅っぽいって言ってもらって、何でかな?って考えたけど……人生が旅みたいなもんだと思う」(金佑龍)。
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