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インタビュー

TUJIKO NORIKO

電子音楽の才媛から届いた3枚のアルバムは、気鋭のクリエイターとのコラボレーション


 99年にサンプラーやシンセサイザーを手に音楽制作を開始。その翌年にリリースされたアルバム『化粧と兵隊』を皮切りに、メゴやサブ・ローザ、トムラブといった海外の名門レーベルからの作品リリースを重ねて高い評価を得ているツジコノリコ。〈音響/エクスペリメンタル・ポップ界のプリンセス〉などと評されているが、電子楽器を用いたクラシカルなシンガー・ソングライターとしての側面も併せ持つ彼女がこの夏、レコード・ショップのonsaとsoup-diskが共同で立ち上げた日本の新レーベル=disques corde、イギリスのファットキャット、オーストラリアのルーム40からそれぞれ、RIOW ARAIとのRATN名義による『J』、青木孝允&ツジコノリコ名義の『28』、ツジコノリコ名義の『Blurred In My Mirror』という3作品を同時リリースした。

「RATNは私が仕上げたデータをARAIさんに渡して、彼の作業を経て返ってきたわけ。彼から返ってきたものを聴いて、タイトルを『J』にしたんやけど、このアルバムはかなり日本っぽくて、しかも歌謡曲っぽい。で『28』は、やっぱ青木くんやからオーガナイズされたキレイで真面目なアルバムになって。で、ツジコノリコ名義のアルバムは、一応私の名義で歌ってもいるけど、私が自発的に作った音は2曲だけで。あれはローレンス(・イングリッシュ。ルーム40を主宰するサウンド・アーティスト)がいきなりホテルの部屋にやってきて、〈アカペラで歌ってくれ〉って言ったからババッと歌って、それに彼が執念で音を付けたっていう」。

 RIOW ARAIのトレードマークであるビートやエディットを前面に押し出さずに、彼女の歌にフォーカスを当てた『J』。3年の歳月をかけて、青木の繊細な作風が彼女の歌と見事に溶け合っている『28』。トラックと歌のバランスが壊れるギリギリのところで成立している『Blurred In My Mirror』。それら3枚は一貫した歌の強度を維持しつつ、作風の違いによって彼女の歌やその先に広がる風景の色彩や明度、湿度、あるいは重力係数といった要素を変化させる。

「変わったことをしたいと思ってるわけじゃない。ただ、ソロでやることに飽きてたから。なんでかって? 自分のすることって大体決まってて、〈私、こうしちゃうなー〉っていうのがわかるのね。それだとつまんないの。でも、よかった。3枚作ったことで、また1人でやるのが楽しくなったから(笑)」。
▼今回リリースされた3タイトルを紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年09月08日 12:00

更新: 2005年09月09日 12:24

ソース: 『bounce』 268号(2005/8/25)

文/小野田 雄