インタビュー

Eddy Meets Yannah



「この関係のいいところは、お互いがパートナーの心を読み取れるってこと。何をしなきゃいけないか、相手に伝えなくていいんだよね」(エディ・ラミッチ)。

「エディは私の心を読めると思ってるみたいだけど、ホントは私が彼の心を読めるだけなの(笑)……ってのは冗談だけど、彼と曲を作るのは楽しいわ。時々モメたりもするけど、互いの努力が楽曲制作を非常
に楽しい行為にしていると思うわ」(ヤンナ・ヴァルデビット)。

 そのように仲良しぶりを発揮するこのエディ・ミーツ・ヤンナ(以下EMY)は、クロアチアはザグレブを拠点に活動するクロスオーヴァー・ミュージックの急先鋒。あのエディ&ダスで活動していたエディと、公私に渡るパートナーのヤンナによるユニットで、コンポストからリリースしたファースト・アルバム『Just Like...』が注目を集めているところだ。その出会いはエディ&ダスがヤンナとコラボレートしたことに始まる。

「エディ&ダスがこのサウンドに私を招待してくれたの。それまでそういう音楽を聴いたこともなかったのよ。いろんな音楽と長い間付き合ってきて、エディと出会ったら突然すべてが繋がったっていう感じね。出会ってずっと恋する相手じゃなかったんだけど、最初に音楽でコネクトして、それからいっしょに遊ぶようになって……恋に落ちたの」(ヤンナ)。

 結成前からエディのDJセットでヤンナが歌を披露するようなコラボを重ねていた両者だが、エディがダスとのコンビを解消したことで正式にEMYは動き出した。ちなみに女性が歌って男性が音を作る、そんな男女ユニットによくある分担はなく、EMYは両者がトラック制作を手掛けている。

「最初エディはうるさかったの。アドヴァイスをくれるんだけど、それが戦闘的なパワーでね!」(ヤンナ)。

「初めは僕が先生だったけど、いまは彼女が先生なんだ(笑)。女性でプログラミングができて、こういう音楽をやっている人は少ないと思うよ」(エディ)。

 そんな両者に共通しているのは、いわゆる正規の音楽教育を受けてきたという経歴だ。そのせいもあるのか、『Just Like...』の収録曲には、昔のコンポスト作品を思わせる複雑なコード進行やコーラス・アレンジが散りばめられている(たぶん)。ただ、そういった難しそうなことをサラッと聴かせることができるのは、ブロークン・ビーツをベースにしたリズム・トラックの多彩さと爽快なメロディーの存在ゆえだろう。曲名さながらの飛翔感が快いハウシーな冒頭曲“Reach The Sky”から、ヤンナの歌声は一貫して心地良い旋律を連れてくる。

「メロディーに重点を置いているというより、自分が感じることを自然と音にしてるの。グルーヴは身体から生まれて、メロディーやコード進行はソウルから生まれてくる。その両方が必要だと思うわ」(ヤンナ)。

 クロアチア~ザグレブの音楽シーンというとイメージしづらいが、大手ラジオ局でクロスオーヴァー系のプログラムを担当するエディは、月イチのイヴェント〈Kontrapunkt〉を主催し、同名のフェスも毎年春に開催するなどして、地元シーンの裾野を広げるべく奮闘中だそう。で、そのように順風満帆のEMYにいっそう絆を強めてもらうべく(?)、相手に改めてほしいところをあえて訊いてみた。

「もっと部屋をキレイに使ってほしいってことかな。でも、それ以外は素晴らしい人よ(笑)」(ヤンナ)。

「改めてほしいところ? そんなのがあったら、いっしょにいないよ(笑)」(エディ)。

 ……ごちそうさまでした。

PROFILE

エディ・ミーツ・ヤンナ
オランダ出身のエディ・ラミッチとクロアチア出身のヤンナ・ヴァルデビットによるユニット。99年にリリースした『High Life』などで知られるエディ&ダスで活動していたエディが、地元を中心にジャズ・バンドなどで歌っていたヤンナと2000年に邂逅。エディ&ダスの解散を経た2003年にユニット結成。翌2004年にファースト・シングル“Walkin' On The Moon”をリリースし、同年にはコンピ『Soul Source REMIXED BOOGIE』にてタニア・マリア“Come With Me”のリミックスを担当。2005年に入ってコンポストと契約。いくつかのリミックス・ワークを通じて評価を高めていき、このたびファースト・アルバム『Just Like...』(Compost/ビクター)の日本盤をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年09月08日 13:00

更新: 2005年09月08日 19:23

ソース: 『bounce』 268号(2005/8/25)

文/高橋 玲子