PACINOS
身軽に音と戯れる2人が作った、オールド・スクールでハンドメイドなレゲエ・アルバム
ルーツ・レゲエをコアとしつつ、クラッシュがやっていたような土臭くてロッキンなレゲエのテイストを、オールド・スクールなヒップホップ感覚で表現する――PACINOSは〈自分の声も楽器のひとつ〉と考えてトースティングするTOHRU SHOTと、レゲエ~カリプソ、ディスコなどの幅広い音楽を栄養分にサンプラーを主体とする最小限の機材で花咲かせるトラックメイカー=DJANGO RO-CKの2人組だ。ユルそうだが実は一筋縄ではいかない彼らのデビュー・アルバム『Hiratsuka Viking Station』は、限りなく生で温かいレゲエや南米音楽、そしていなせなロックとヒップホップの香りに満ち溢れ、しかもその構成力の高さであっという間に最後まで楽しめちゃうのである。
「デ・ラ・ソウルのアルバムみたいな、全体を通した流れで聴ける作品にしたかった。途中のジングルとかも昔のラジオ番組というか、〈スネークマンショー〉みたいな感覚で」(DJANGO ROCK)。
「丸くてあったかい、CDだけどレコードっぽいというか……無意識にそういう音になる。陰と陽で言えば陰のかっこよさではなく、明るい曲をどこまでかっこよく見せるかっていう」(TOHRU SHO-T)。
2人は少ない機材でのセルフ・レコーディングを行い、パードン木村によるローファイなマスタリングもあって、その場限りでもノスタルジックでもない、ずっと聴けるフレッシュな作品を作り上げた。現在全盛のダンスホール・シーンとも絶妙な距離感を保つ今作には、そんな距離感のなかで遊べる仲間=RUB-A-DUB MA-RKETのe-muraによるリミックスも絶妙な味を加えている。
「何もないけどやっちゃえ!って。歌も一発録りで」(TOHRU SHOT)。
「調子いいところをそのまま残して、ありものでやり尽くした。よくここまでできたなって(笑)」(DJANGO ROCK)。
あの青山MIXでデニーロス(SHOJI、荏開津広、松岡徹などによる伝説的クルー)のクロスオーヴァーなプレイを聴いてぶっ飛び、〈デニーロときたらパチーノだろ!〉とまんまなネーミングで94年に結成されて現在に至る彼ら。そんな2人にとってのレゲエとは?
「踊る音楽として、完璧なカタチ。踊らずにはいられないっていうか」(DJANGO ROCK)。
「〈ロック〉だね」(TOHRU SHOT)。
衝動と感覚をダンスに結びつけようとする者ならではの、ナイスな答えが返ってきた。
▼文中に登場したアーティストの作品を紹介。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2005年09月22日 16:00
更新: 2005年09月22日 20:04
ソース: 『bounce』 268号(2005/8/25)
文/YAHMAN