インタビュー

ASSASSIN


 見事なシックス・パックス。ジャマイカはオラカベッサ・ベイのステージでTシャツを脱いだアサシンの腹筋を見て、ダンスホール・レゲエがネクスト・レヴェルに到達したことを悟る。

「高校の時から1日2回、シャワーを浴びる前に腕立てを30回と腹筋を50回する習慣なんだ」と、NYはクイーンズのホテルで本人はサラリとコメント。

「セクシーになろうとかじゃなくて、俺たちが絶対に失わないものって自分の身体だけでしょ? それを大切にしているだけだよ」。

 ちなみに、スケジュールが許せば夜明け前にビーチを30分走るとか。ダンスにはめったに行かないし、酒/タバコ関係にもほとんど手を出さない。 

〈暗殺者〉という名前どおり、ハードコアなDJスタイルが目印の22歳。〈侵入〉を意味するタイトルのファースト・アルバム『Infiltration』は、レゲエ・シーンで一昨年前から立て続けに放ったヒット曲群から5曲と、アルバム用に新しく作った12曲を収録した気合い入りまくりの決定盤。本人も、「外せないヒット曲を押さえつつ、値段分の価値があるようにエクスクルーシヴな曲を十分に揃えた。シリーナ・ジョンソンとの曲と似ていたから、レディ・ソウと作った曲が入れられなかったのは残念だったけど、仕上がりには満足しているよ」とキッパリ。制作陣には、スティーリー&クリーヴィーやトニー・ケリーらヴェテランから、レンキー、トロイトン、クリストファー・バーチ、スノーコーンなど、ここ数年のダンスを沸かせている新しめの才能までが参加。R&B畑からはヴェダ・ノーブルズも。

「それぞれ仕事のやり方は違うけれど、直接コミュニケーションを取って個人的な繋がりを作るのは大事だよね。バーチやスノーコーンは友達だし」。

 珍しいところでは、T.O.K.のベイ・Cも1曲プロデュースしている。

「T.O.K.とは、ツアーでよくいっしょになるから、いきなりプロデューサーとアーティストというふうに構えるのはムリな話で、アサシンとベイ・Cはいつもどおり大笑いしながら曲を作ったって感じだ」。

 リリース日が近い関係で、ショーン・ポール、ダミアン・マーリーとエア・プレイの回数やアルバムのセールスを競うのは必至。

「デビュー・アルバムだから、自分の可能性を示すことが大切だ。彼らは3枚目だし、ずっと有名だから意識はしていないよ。レゲエをよく知っている人に、俺のアルバムの良さが客観的にわかってもらえたら嬉しいよね」。

 謙虚にそう言うものの、最新ヒット“As A Man”で90年代風のレゲエのリヴァイヴァル・ブームを起こした実力もある。

「前からあるパターンで俺が始めたわけではないけれど、あの曲がヒットした後に90年代っぽい曲がいっぱい出たのは事実だね。俺自身は、90年代初期の曲をそのまま使うというのは避けたくて、土台だけそうして自分らしいフレイヴァーを加えるように努力したけど、いま出回っている曲は昔のヒット曲のメロディーをそのまま使っていて、クリエイティヴィティーが足りないと思う」。

 アーティストになっていちばん良かったことを尋ねたら、「家族や親しい人たちを養えること。兄弟の学費や1年前にガンを宣告された母親の治療費を払えることはありがたいね」と答えたのには正直グッときた。男気満載の〈暗殺者〉である。

 とはいえ、マジメ一辺倒でもない。インタヴュー後、なかなか届かないランチに業を煮やして、「あと15分で届かなかったら、飢え死にしたアーティストの死体が一個転がることになると思ってくれ」と担当者に電話させる場面も。アハハハ。ランチは無事に届き、同夜にはマンハッタンでのHOT97主催のビッグ・ショウでオーディエンスをバッチリ跳ねさせた。アサシン! Check, Check, Check, Check!!

PROFILE

アサシン
本名ジェフリー・キャンベル。82年12月22日生まれ、ジャマイカ出身のレゲエDJ。99年、ハイスクールを卒業する年に自作の曲を友人へ贈り、その曲が友人の叔父であるスプラガ・ベンツに渡ったことがきっかけで本格的な活動を開始。数々のヒット・リディムに乗って精力的に7インチEPをリリースしていくなか、〈Diwali〉での“Ruffest & Tuffest”や〈Stepz〉での“Idiot Ting That”などがヒットを記録。後者が山本“KID”徳郁の入場曲として使用されたこともあって、日本でも注目を集める。今年に入ってコンピ『Reggae Gold 2005』に数曲収録されたほか、シングル“As A Man”が大ヒット記録を更新中。このたびファースト・アルバム『Infiltration』(VP)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年09月29日 11:00

更新: 2005年09月29日 18:50

ソース: 『bounce』 269号(2005/9/25)

文/池城 美菜子