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インタビュー

SUGARHILL DOWNTOWN ORCHESTRA

突然変異のスカ・バンド? 貪欲にしてキュート、自由でフレッシュなニュー・アルバム!


 フェスに足を運ぶとスカ・バンドが出ていない日はないんじゃない?ってくらい、いまの日本にはスカ・バンドが多い。それは、ここ10年くらいでシーンが形成され、現在に至っていることの結果だ。そんな、ある意味では〈安定〉に進もうとしている日本のスカ・シーンにおいて、SUGARHILL DOWNTOWN ORCHESTRA(以下SDO)は異端児と言うことができるんじゃないかと思う。ファースト・ミニ・アルバム『MMCD』で、スカというフィルターを通してはっぴいえんどに対するオマージュを見せたかと思うと、新作『FRUITS OF THE MUSIC』では、80年代的なアプローチやヒップホップへの歩み寄りを見せている。数多のスカ・バンドが、本来的な意味では虚構であるはずの〈ルーツ〉を追い求めようとするなかで、SDOのとんでもなく自由な姿勢は浮き立って見えてくるのだ。

「バンドの立ち位置についてはまったく考えていないんです。スカもJ-Popもハードコアもヒップホップも大好きだから、今はスカのギター・カッティングを入れた曲が多いけど、今後どうなるかは自分たちでもまったくわからないです」(PRINCE KOTCH/ベース)。

 SDOの編成はヴォーカル、ギター、ベース、ドラムスの4人。スカ・バンドにおいて音の要となるホーンが不在ということも、前述の〈自由さ〉と無関係ではないだろう。

「シュガー・ベイブや初期スペシャルズとか、影響を受けたバンドにホーンがいないことが大きいのかも。ヴォーカルがもっとも大きなファクターだとは思っています。客観的に見てヴォーカルのU-KISSが(元スペシャルズの)テリー・ホールばりな存在だったらカッコイイな~と(笑)」(TSUN×20/ギター)。

 彼らがめざすところを訊いてみると、「テーマは〈欲張りサウンドをブチかます〉なんです(笑)。通して聴いた時に、ミックステープみたいな感覚が出ればいいなと思って」(TSUN×20)とのこと。さらには、「いつかハードコアの曲だけのアルバムを作りたい」(PRINCE KOTCH)という回答も。そんな、はっぴいえんどもパブリック・エナミーもスペシャルズも同列に捉えたヤンチャな姿勢は、彼らが鳴らすフレッシュなサウンドと直結している。新作が、取っ散らかりつつも〈グッとくる〉ツボだらけの、全方位対応型エンターテイメントとなっている理由はそこにある。
▼SUGARHILL DOWNTOWN ORCHESTRAの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年09月29日 13:00

更新: 2005年09月29日 18:48

ソース: 『bounce』 269号(2005/9/25)

文/ヤング係長