椿屋四重奏
これこそが〈和のロック〉のリアルな形。〈歌〉の力を究めたニュー・アルバムが完成!
純日本的な響きを持ったバンド名とメロディーで異彩を放ってきた3ピース・バンド、椿屋四重奏。そんな彼らの〈様子のよろしい〉音楽性は、昨年4月にリリースされたファースト・アルバム『深紅なる肖像』の高評価によって、現代にも十分有効なものであることが証明された。
「『深紅なる肖像』には、〈全てのロック幻想を受けとめる〉っていうキャッチコピーが付いていたんですけど、そのわりにはやってることがあまり自覚的ではなかったんですよね。〈初期衝動〉っていうんですか? そういうのが大半を占めてて。なので、次のアルバムではそういう漠然としたイメージをもっと自覚的になって具現化していかなきゃいけないなと。『深紅なる肖像』を作り終えてすぐに次のイメージは見えてたんだけど、果たしてそれがサマになるのか、自分に似合うんだろうかって考えてみたり、3ピースでの限界を感じたりとか、いろいろ変えていかなくちゃいけないと思ったことが出てきて。それをこの1年数か月の間で一個一個クリアしていった感じですね」(中田裕二、ヴォーカル/ギター:以下同)。
そして届けられたニュー・アルバム『薔薇とダイヤモンド』。
「よりリアルなフィクションを描くようになったかな。日常のなかで常にイメージするものって、要するに〈フィクション〉じゃないですか。それがバランスよく入ってこそリアルな感覚を与える歌になると思うんですよ」。
中田が17歳のときに書いたという“朱い鳥”を含む本作は、安全地帯、チャゲ&飛鳥、THE YELLOW MONKEY、西城秀樹など、〈素敵なフィクション〉をその歌のなかで見せてくれたアーティストを好み、「日本のロックは歌謡曲のなかに含まれるいちジャンルだと思うんですよね」と語る中田のメロウネスを、さらにアップさせた全10曲である。
「今回、とにかく歌が中心のバンドなんだよっていうことを伝えたかったんで、歌を前に出した音作りをしてみたんです。それって尖った音ではないので、血気盛んな若手のロック・バンドとしては勇気がいることなんですけど、ウチらの歌にはそうすることを十分納得してもらえるだけの説得力があると思うんですよね」。
▼ 椿屋四重奏の作品を紹介。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2005年10月06日 17:00
更新: 2005年10月20日 19:06
ソース: 『bounce』 269号(2005/9/25)
文/久保田 泰平