インタビュー

LINDSTROM & PRINS THOMAS

フロアのグルーヴを更新してきたノルウェーの超獣コンビは、世界をタイムレスな輝きで満たす!!


 かつてのディスコをいまの視点からアップデイトした動きがおもしろい現在のハウス・シーン。この流れがダニエル・ワンのDJプレイ&快作ミックス『C'mon Let's Fly』やイタロ・ハウスの再評価などに通じているわけだが、この流れのなかで、かつてのディスコに漂っていた空気をハウスのフォーマットで再生したようなアーティストが世界各地から登場してきている。その代表格であり、多くの人にノルウェーのダンス・ミュージック・シーンを注目させるきっかけにもなった2人がリンドストロムとプリンス・トーマスだ。共にさまざまな名義で個別の活動も盛んな両者が最強コンビとしてのアルバム『Lindstrom & Prins Thomas』をついにリリースした。

「俺たちは5年ほど前にオスロで出会っていた。トーマスは最高のパートナーだと感じたよ。音楽に対するヴィジョンや共通点がたくさんあってね」(リンドストロム)。

「今回のアルバムは真っ白なカンヴァスに2人で絵を描いたようなもので、事前に決めてたことは一切ない。フロアで得たことを素直にアルバムに反映したかったのさ。ただのシングル集じゃなくてね」(トーマス)。

 それぞれリンドストロムはフィデリティ、トーマスはフル・バップと自身のレーベルがあるのに、今回のアルバムはグリマーズのリリースで知られるエスキモーからのリリースである。

「俺たちのレーベルは12インチしかリリースしない。2003年の終わり頃に作った数曲が12インチ向きじゃなかったから、アルバムを作ることにしたんだ」(リンドストロム)。

「俺たちよりも経験豊富な連中と組みたかったんだ。せっかくフロア以外でも楽しめるアルバムを作ったのに、プロモーションがヘマで世界で2,000枚しか売れなかった、とかじゃ悲しいからね」(トーマス)。

 そんな話もあるように、今作にはリンドストロムの大ヒット“I Feel Space”のようなディスコティークなベースラインは目立っていないし、同じくリンドストロムによるスロウ・シュープリーム名義やトーマスのメジャー・スウェリングス名義で見せる壮絶なリエディットもない。いや、要素として含んではいるのだが、それ以上にたっぷり盛り込まれたギター~ベース~ドラムといった楽器のエレメントもあってか、70年代のロックやフォークなどの質感が前面に出た、いわゆるフロアライクではない感じも受けるのだ。

「クラブ向けよりはリスニング向けにしたかった。できるだけ生楽器を使ってライヴ感を大事にしたかったんだ。俺たちはポップ、フォーク、サイケ……70年代のあらゆるジャンルに影響されていると思うよ。70年代の暖かさと80年代のクールな感じを融合させた、というか未来的なプロダクションをレトロな方法でプレイしたっていうほうがマッチしてるかな」(リンドストロム)。

 いまでこそコアなハウス・ファンが支持層の中心を占めるこの2人。しかし彼らが生み出した『Lindstrom & Prins Thomas』は、フィールドを越えてダンス・ミュージックの未来と過去が現在で結びついた、実にタイムレスな傑作だと断言しよう。

「そう、俺はタイムレスな音楽を作ろうとしているんだよ。まあ、アンダーグラウンド扱いされるのも嫌
いじゃないけど」(リンドストロム)。

「俺はオーヴァーグラウンドで売れてもいいと思ってるね!」(トーマス)。
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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年10月27日 13:00

更新: 2005年10月27日 18:54

ソース: 『bounce』 270号(2005/10/25)

文/石田 靖博