インタビュー

Magnolia


 Magnoliaと聞いてピンとこない人でも、写真を見て〈ああ!〉と頷く人がいるのではないかと思う。個々がそれぞれにバンドやユニットで活躍する4人。ライヴやイヴェントはもちろん、手持ちのCDのクレジットなどでも、どこかで彼らの名前を見かけたことがあるだろう。

 だが、そんな実力派バンドであるものの、実際はあまりにも無邪気にロックンロールする連中。なにかとジャンルやシーンで区分けされる時代に反旗を翻すが如く、風穴を開けるようにひたすらビートを刻み、黙々とグルーヴを回転させていく。その様子は一見クールではあるものの、内に秘めた激しい情熱に満ちたものだ。

「95~96年頃かな、この4人がロンドンと東京を、偶然にも行き来していた時期があったんですよ。僕がロンドンに行ってた時に、ツルちゃん(大西ツル)はNATURAL CALAMITYのレコーディングでやっぱりロンドンに来てて。で、僕は敏ちゃん(笠原敏幸)に紹介してもらってMAIを知っていたんだけど、MAIもその頃ロンドンに住んでいたんですよ」(椎野恭一)。

「ちょうど一足先に日本に戻っていた敏さんと、東京でいっしょにセッションしたらすごく良くて。そこに椎野さんが加わって、MAIが入って4人になって。最初はどんな音楽をやろうかとかって目的はなかったんですけど、すべてがタイミング良くいきましたね」(大西)。

 同じ空気を探してロンドンに向かい、同じ空気を吸った後に東京で絆を深めた4人。4人の話を聞いていると、まるでロックンロールの持つプリミティヴな匂いに吸い寄せられて集まった一匹狼たちが自然と肩を寄せ合うようになったような印象を受ける。 60年代のサイケデリック・ロックのうねりある音像や、70年代のスワンプ・ロックの乾いた音色とが折り重なったようなMagnoliaのアーシーなサウンドは、今でこそトミー・ゲレロやジャック・ジョンソンらサーフ系ロックを愛聴する世代からも絶大な支持を得ているが、彼らにしてみれば、パブロフの犬よろしく、本能的に音に反応して作り上げた結果なのだろう。だから、彼らの音には作為的な響きが何ひとつない。

「最初はライヴのことを全然考えていなくて、レコーディング・アートみたいなことを めざしていたんですよ。私も人前で歌うことに自信なんてなかったし、まさかこんな感じで自分が歌えるようになるとは思ってなかったですね」(MAI)。

「ライヴにはライヴの良さがあるのはわかっているんだけど、この4人では最初、録音することのおもしろさを追究したかったんですね。それが結果としていろいろな引き出しに繋がったと思います」(笠原)。

「だから、Magnoliaの音楽には2種類あるんです。グルーヴを続けて完成するような曲と、詩やメロディーをちゃんと伝えていこうとするような曲と。それがここ数年でハッキリしてきましたね。今回のアルバムは、時間的にギリギリの作業だったんですけど、それができたのもバンドとしての足腰がしっかりしてきたからかもしれないですね」(椎野)。

 ファースト・フル・アルバム『NUTS』は、まるでかつてのデレク&ザ・ドミノスのアルバムのように、緊迫した空気とリラックスしたムードとが混在した濃厚でヒューマンな一枚。本当はもっと時間をかけて録りたかったと言う4人だが、一方で、彼らはこの夏、CaravanやKeisonらとバスで全国縦断するツアー〈Surf Rock Trip〉で充実した時間を過ごしてきた。そのリアルなドキュメントが、音に生々しく反映されているとも言える。

「来年以降もなにかまた、形を変えてやっていきたいですね。サーフ系とかに限らずいろんなバンドとも、もっといっしょにやりたいし」(MAI)。

「銀杏BOYZとかいいよね(笑)」(椎野)。

PROFILE

Magnolia
元AjicoやJUDEのドラマーである椎野恭一(ドラム)、CHARAやUAのツアー・メンバーである笠原敏幸(ベース)、NATURAL CALAMITYの森俊二と組んだユニット=UMAUMAのMAI(ヴォーカル)、TYCOONTOSH BANDや花田裕之バンドなどで活躍する大西ツル(ギター)から成る4人組。96年にロンドンでのセッションをとおして出会い、帰国後にバンドを結成。東京や横浜を中心にしたライヴ活動や、日本各地でサーファーが主催するイヴェントに出演して、口コミで話題を集めていく。2003年にミニ・アルバム『Magnolia』でデビューし、2005年8月にはミニ・アルバム『Elgin Crescent』をリリース。さらなる注目を集めるなか、ファースト・アルバム『NUTS』(bounce /NMNL )を11月9日にリリースする。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年11月10日 14:00

更新: 2005年12月01日 18:32

ソース: 『bounce』 270号(2005/10/25)

文/岡村 詩野