THE PUSSYCAT DOLLS
女たちの憧れ! 男どもは悶絶! グウェン・ステファニーやクリスティーナ・アギレラ、ヒルトン姉妹、シャーリーズ・セロン、パメラ・アンダーソンといったセレブも賞賛を惜しまないウルトラ・セクシー・キャバレー・レヴュー……とか書き出すと、いかがわしくてグリッターなものを想像してしまうでしょうが、それはまったくもって正しいことです。何しろ名前がプッシーキャット・ドールズですから。ついでにPCDと略すと、何かよろしくない錠剤みたいですが、興奮剤や媚薬にも似た効果のほどは早くも証明されているようですよ!
映画「シャーク・テイル」のサントラで「ロッキー・ホラー・ショウ」の挿入歌をカヴァーしたのに続き、シー・ローがプロデュースしてバスタ・ライムズがラップで参加したこの夏の大ヒット曲“Don't Cha”で世界に撒き散らされたPCD、先述のようにすでに本国では有名な存在ですが、実体はどんなグループなのでしょうか?
「私が捉えるPCDは、無敵だけどとても傷つきやすい女の子たちよ。強いけれど、遊び心もあるの」――そう話すニコールは、レコード・デビューにあたってPCDに加入したリード・シンガー。ウィル・スミスやシャギーの近作に参加してもいましたが、TV番組〈Popstars〉から生まれたエデンズ・クラッシュの一員として華々しくデビューした頃の姿を覚えている人も多いかもしれませんね。もちろん、他のメンバーの経歴も賑やかで、モデルやダンサーを務めていたアシュリー、マイアミ・ヒートのダンス・チームでキャプテンを務めていたジェシカ、ブロードウェイ・ダンス・センターの奨学生を経てカジノや豪華客船で踊ってきたというキンバリー……。なかでもカーミットはリッキー・マーティンの〈La Vida Loca Girls〉としての活躍などを通じて、すでにコリオグラファーとしても名を馳せる存在のようです。残るメロディーはMTVで観たPCDに憧れて、ただひとり一般オーディションを勝ち残ったシンガー。カーミットを除いて、皆ここ2、3年で加入したことになります。
そう、「私の念願の居場所! PCDは天才だと思った。メンバーになれて本当に光栄よ」(ジェシカ)といった発言からもわかるように、彼女たちはメヌード、もっと卑近に言えばモーニング娘。のように、メンバーが交替していく種類のグループなのですね。そもそも、ダンサー/コリオグラファーのロビン・アンティンが、ダンサー仲間たちと〈何かクリエイティヴなことをやろう〉と独自にショウの練習などを始めたのがスタートなのだそう。で、95年にジョニー・デップが所有する〈Vapor Room〉でショウを開始し、徐々に舞台を大きくして現在に至るというわけです。
そういうグループだからこそ周到に作り込まれた初のアルバム『PCD』は、彼女たちの小生意気でゴージャスな世界観を見事に体現するものでしょう。先述の“Don't Cha”をはじめ、ティンバランドの変なロボット・ポップ“Wait A Minute”、さらにウィル・アイ・アムやショーン・ギャレット+ポロウ、クワメによる鮮烈なR&Bトラックと、ドナ・サマーやハービー・マン、シュープリームスのカヴァーといったミュージカル仕立ての楽曲が入り混じって派手なショウ・タイムを演出。「ムーラン・ルージュ」のサントラや最近のブラック・アイド・ピーズにも通じる賑々しさを感じる……と思ったら、その両方に関わってきた敏腕ロン・フェア(現在はA&M副社長)がバックアップしているのでした。
とはいえ勘違いしちゃいけないのは、作詞も手掛けるニコールが「PCDの重要さは、女性のリアルな気持ちを込めて描写することにもあるのよ」と話しているように、これは男たちにのみ向けられたショウではないということ。PCDの生みの親であるロビン・アンティンも「女性は内心誰もがPCDなの。つまり女性が自分自身に自信を持つことの象徴なのよ」 とコンセプトを明かしていますからね。ともかく、セクシーさとガール・パワーを煌びやかに併せ持った希有なグループ、PCD。中毒者はまだまだ増えていきそうですね!
PROFILE
プッシーキャット・ドールズ
現在はニコール、メロディー、カーミット、アシュリー、ジェシカ、キンバリーの6人組。ダンサー/コリオグラファーのロビン・アンティンがプロデュースするパフォーマンス・ユニットで、LAのクラブ〈Vapor Room〉で95年からショウを開始。アーティストやセレブの間で徐々に話題を集め、2002年よりNYの〈Roxy〉に拠点を移す。並行して「チャーリーズ・エンジェル」「ビー・クール」などの映画やTV、プロモ・クリップなどにも出演。2004年にはA&Mと契約し、サントラ『Shark Tale』などに楽曲を提供。今年に入ってファースト・シングル“Don't Cha”が全米2位の大ヒットを記録するなか、11月2日にファースト・アルバム『PCD』(A&M/ユニバーサル)の日本盤をリリースする。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2005年11月10日 14:00
更新: 2005年11月10日 18:47
ソース: 『bounce』 270号(2005/10/25)
文/轟 ひろみ