BULLET FOR MY VALENTINE
有望な新人バンドが次々に現れて、かつてない盛り上がりを見せているUKロック・シーン。なかでも新世代ラウド/ヘヴィー・ロックの新たな聖地として注目を集めているのが、ロスト・プロフェッツやフューネラル・フォー・ア・フレンドといったバンドを世に送り出しているウェールズだ。そして、そのウェールズで今もっともアグレッシヴなサウンドを鳴らすバンドとして注目を集めているのが、このブレット・フォー・マイ・ヴァレンタインである。まだEP盤しかリリースしていなかった段階で、「KEERANG!」「NME」「MUSIC WEEK」などのUK各誌に絶賛され、〈ダウンロード・フェスティヴァル〉〈レディング・フェスティヴァル〉、そして日本の〈サマソニ〉(東京公演はメンバーの体調不良によりキャンセル)などにも参加。新人離れしたライヴ・パフォーマンスで各地のオーディエンスを魅了し続けている。そんな彼らが、このたび満を持してファースト・アルバム『The Poison』をリリース! これが、EP盤を聴いた時点でのこちらの予想を遥かに超える、とんでもなく完成度の高い作品となっているのだ。このうえなくヘヴィーでメタリックなサウンドでありながら、絶妙にフックの効いたメロディーやドラマティックな曲展開で、アルバム一枚をとおしてまったく飽きさせない。勢いと絶叫だけに頼ることなく、楽曲そのものを磨き上げて、メンバー全員が確かな演奏能力を遺憾なく発揮したことにより、この比類なき傑作が誕生したと言えよう。
「ものすごく誇りに思える作品ができたと思っている。最高のアルバムにすべく、俺たちのすべてを投入したからね。全身全霊込めて作った作品だ。アルバムを聴いた人たちはみんな絶賛してくれているよ」(マシュー“マット”タック:以下同)。
勢いに乗り、今まさに〈UKロック・シーンのニュー・ヒーロー〉的な存在となりつつある彼らだが、話を訊いていくうちに、彼らは生粋の、というよりもコテコテのメタラーであることが判明。
「俺が刺激を受けた最初のバンドはメタリカ。16~18歳までの間はメタリカしか聴かなかったよ。それからさらにヘヴィーなマシーン・ヘッドとかパンテラにハマり、ここ2年間はアイアン・メイデンに入れ込んでいる」と嬉々として語り、「パンクにはまったく興味ない」と断言。今はどんな音楽を聴いているのかと尋ねれば、「最近はバンド内でメガデスが大流行(笑)。なんだか突然聴きたくなって、今またホレ込んでしまっている」と言い出す始末。ある意味純粋というか、本当にメタルを愛しているんだなあと感心してしまうほど。実際、アルバムの随所で聴けるツイン・リードのハモリやキメキメのギター・ソロからは、オールド・スクール・メタルからの影響が色濃く感じられる。
しかし様式にこだわり、早弾きやギター・ソロに夢中になるあまり、時に閉鎖的になって自己満足に陥りがちな一部のメタル・バンドと彼らとの間には、決定的な違いがある。
「ギター・ソロやリフも大事だけど、やっぱり曲に肝心なのは強烈なフックとメロディー。一度聴いたら忘れられない、口ずさまずにはいられないようなメロディー作りに徹しているよ」。
まず第一に、メロディーと楽曲ありき。それがあるからこそ、どんなにヘヴィーでアグレッシヴなサウンドでも、多くの支持を獲得することができるのだろう。冒頭で触れたように、シーン自体が盛り上がってきている現在の状況でこのアルバムをリリースすることによって、彼らがさらなるブレイクを果たすことは間違いない。
「今は俺たちにとっては絶好のタイミングだ。これほどエキサイティングなことはない。このアルバムは全世界で100万枚を狙っている。達成できたら俺たちは世界一幸せなウェールズ人だよ。祝杯の酒をガンガンやることになるだろうな(笑)」。
PROFILE
ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタイン
マシュー“マット”タック(ヴォーカル/ギター)、マイケル“パッジ”パジェット(ギター)、ジェイソン“ジェイ”ジェイムズ(ベース)、マイケル“ムース”トーマス(ドラムス)から成る4人組。97年、母体となるバンドをウェールズで結成し、2004年5月に現在のバンド名に改名。同年、ヴィジブル・ノイズと契約し、11月にEP盤『Bullet For My Valentine』でデビュー。同時期に〈ダウンロード・フェスティヴァル〉にも出演。今年3月にリリースしたシングル“4 Words(To Choke Upon)”がUKチャートTOP40入りを記録する。また、8月には〈サマソニ〉で初来日を果たすなど話題を集めるなか、10月26日にファースト・アルバム『The Poison』(Jive/BMG JAPAN)がリリースされる。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2005年11月17日 15:00
更新: 2005年11月17日 17:39
ソース: 『bounce』 270号(2005/10/25)
文/粟野 竜二