インタビュー

shango comedown above me

11人の楽団が鳴らす、鮮やかにして屈強なるハイブリッド・ミュージック


 シャンゴ(キューバの民族信仰に登場する太鼓の神)が俺に降りてきた!というトライバルなネーミングを持つ、11人編成のグループによるファースト・アルバムである。神戸を拠点にベース&ドラムのリズム隊によって結成、パーカッション2名を含む大所帯でありながら、そのサウンドは特定のジャンルに収まらないフリーフォームなものだ。

「そのときそのときで好きな音をやっていけるバンドにしたかった」(NORI、ベース兼リーダー)という彼らのサウンドからは、70年代のニュー・ソウルやファンキーなロック、ジャズ、NYラテン、アフロビートといった多彩なバックボーンが窺えるが、このバンドではそうした音楽的な方向性以上に、風通しの良さや、一体感を重視しているという。

「サウンド面だけではなくて、まず人間関係が先で、その後〈楽器何やっとんの?〉という感じで集まったメンバー。一人一人の人間性が音に表れるのが理想」(NORI)。

 なるほど、ここで聴けるのは一曲ごとのコンセプトよりもメンバー間の精神的な繋がりが結晶化された音楽である。個々の演奏はジャム・バンド並みに主張の激しいものだが、この編成としては珍しく、ほとんどの曲でヴォーカリストをフィーチャーすることで〈歌モノ〉として成立している点も、このグループの大きな個性となっている。

「リズム隊が前に出ているシャンゴで歌うのは、他ではできない新しい体験」と語る小山ゆうのヴォーカルも、このアルバムを特別なものとしている。これまでもUA、birdといったソウルフルな女性シンガーをたびたび生んできた関西シーンだが、そうした系譜のニューカマーを予感させるに十分だ。彼女の歌には、演奏やリズムの厚みをひとつの楽曲に集約していくスリルがある。

 全曲をオリジナル楽曲で占めている本作は、驚くべきことに歌詞においてもその多くを全員で共作している。「プライヴェートでも仲良いですよ。兄弟みたいな感じがいちばん近い」(小山)という共同体としての強さは、ライヴの場でも圧倒的な形で表れるに違いない。〈MINAMI WHEEL 2005〉にも出演、今後全国規模のツアーが期待される彼らの上に舞い降りた神を体験すべし!

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掲載: 2005年11月17日 17:00

更新: 2005年11月17日 17:40

ソース: 『bounce』 270号(2005/10/25)

文/成田 佳洋