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インタビュー

NO MILK

東京とデトロイトを跨いで現代のファンクネスを創造する彼が、フル・アルバムをリリース!


 昨年の夏、代官山UNIT。NO MILKがスライ&ザ・ファミリー・ストーン“Dance To The Music”を執拗に反復したような曲“Step On”を披露していて、そのときはあまりにも粗削りなスタイルに驚かされた。しかし今日、そのような粗さとスタジオで練られた緻密さとが同居した初のフル・アルバム『Up All Night』を聴きながら、その進化にふたたび驚いている。最初のEPをリリースして以来7年のキャリアを持つ彼は、近年〈ビートダウン〉と呼ばれるスタイルのダウンテンポなハウスを発表してきた。が、この黒くてフリーキーなアルバムに、いわゆる〈ビートダウン〉の語義のなかで収まるような曲はひとつもないのだ。

「99年頃、(テクノやハウスといった)ダンス・ミュージックが自分のなかでマンネリ化してきて。そのときにジャズや、そこから派生したファンクやソウルに興味を持つようになった。聴いたときの暗くもあり明るくもあり、という印象。そこが好きで。あとファンクってベースがいちばん芯になってくるじゃないですか。それでベースを弾くようになったんです」。

 肉体性に忠実に揺らいだグルーヴ。なかにはデトロイトのマリック・アルストンが来日中に共作したという楽曲も並ぶ。そういえばNO MILKはかつてデトロイトを訪れ、帰国後に自身のレーベル=Rhapsodyを設立。2枚のEPをリリースしている。

「デトロイトの人って、ヴァイタリティーがすごい。みんなとりあえずは動くし、それができ続けているから常にシーンがあるのかなと思った。東京もコミュニティーが確実に大きくなってきていると思うし、そういう力があれば、例えば(コアではない)一般の人が来てもおもしろいと思えるパーティーができると思う。(注目しているDJは)KENT君とか、KEI AND TAKASHI(MIST THE PARTY)、CHIDA君とか。同世代にもたくさんいるんです」。

 デビューEPを発表した古巣のoutergaze、旅先のデトロイト、自身参加のパーティー〈Better Days〉、CALM主宰のMUSIC CONCEPTIONなど……みずからのフットワークを広げその才能を開花してきたNO MILK。最近は、ビートダウン界の名士=ノーム・タリーのリミキサーに起用されたとのこと。『Up All Night』を聴けば、その抜擢の理由も必ずわかるはずだ。
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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年11月24日 16:00

更新: 2005年11月24日 20:14

ソース: 『bounce』 270号(2005/10/25)

文/リョウ 原田