インタビュー

GOTH-TRAD

貪欲に進化するビートで新境地を切り拓いた、初期衝動を刺激する〈Mad Rave〉な逸品!


 日本はもとより海外においても数多くのライヴを行い、アート・リンゼイ、マーズ・ヴォルタといったアクトとの共演も果たしているGOTH-TRAD。盟友、秋本武士とのREBEL FAMILIAでの活動も知られているが、彼はこれまでに2枚のソロ・アルバムをリリースしている。そのサウンドの特徴――それはインプロヴィゼーション(=即興)で繰り広げられるダークなノイズ・サウンドかもしれない。今年1月にリリースした『The Inverted Perspective』はビートレスなアルバムだったし、そう思うのが自然なことだろう。ただ、それはこれまでの話だ。このたびリリースされたニュー・アルバム『Mad Raver's Dance Floor』を聴けば、それは彼の一部だったことに気付く。

「前のアルバムをリリースする前に、今回のアルバムの構想もすでに頭のなかにあって、(今作用の)トラックも作ってたんですよ。やりたいことは明確だったから、制作の進行も早かった。前作とは違う感じの内容なので、リリースするんであれば早いほうがいいと思いましたね。前作はタイトルもインプロの部分も、あの形で完結させるのがベストだと思った。今作の要素が入ることで、そのバランスが崩れると思ったんできちんと分けたかったんです」。

 では、彼が頭のなかで描いていた今作の構想とは? そして、その要素とは?

「もともと、中学生の時に聴いていた90年代初期のレイヴ・ミュージックがきっかけで、電子音楽にのめり込んでいったんです。前作を作ってる時もそういうものを聴いていたし、ノイズというのは自分にとって表現するものなのでリスニングすることはなくて。自分で買って聴いたりするのは、ずっとヒップホップやドラムンベース、イギリスのクラブ・ミュージックだったり。そこでグライム・シーンの音にはまって。90年代初期のレイヴの匂いというか自分がレイヴにはまった空気と一致する部分がすごくあったんですよ。ある新しいジャンルが生まれる瞬間のパワー、それはすごくカッコイイと思うんです。(グライムを聴いた時に)初期衝動みたいなものが甦らされた。そこでそういうものを作りたいという意欲が出てきたんです」。

『Mad Raver's Dance Floor』には、彼がこれまでの体験や経験、そして新たなる実験のもとに作り上げたビート、そしてグルーヴが、ブレイクビーツやドラムンベースとなって詰まっている。タイトルからも如実にわかることだが、これはあくまでダンスさせるためのものだ。

「いま振り返って、ジャンルとして確立される前の昔の音を聴くと、カテゴライズされてないけどすべてはそこに詰まってるんですよ。日本にいると新しい情報って入ってくるじゃないですか? その情報を自分なりに解釈したものが、新しいものになるというのもあって。今回はグライムとかの最近の要素に昔のレイヴの要素をプラスして出したかったんです。それがある意味、また新しい形になると思ったから」。
▼GOTH-TRADの作品。

▼GOTH-TRADが選ぶ〈Mad Rave〉な作品を紹介。


T99の92年作『Children Of Chaos』(Columbia)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年12月01日 18:00

更新: 2005年12月01日 18:31

ソース: 『bounce』 271号(2005/11/25)

文/池田 義昭