Riddim Saunter
パーティーが始まる──ライヴハウス/クラブを問わず、俊敏なフットワークで世間を騒がせているバンド、riddim saunter。そのファースト・アルバム『CURRENT』は、タイトルにもあるようにバンドの〈現在〉がはっきりと収められている。
「今回のアルバムでは自分たちの意識の変化というのがいちばん大きくて。やりたいことをやるだけじゃなくて、真剣に音楽に対して向き合ってできたことがいちばん良かった」(TAICHI FURUKAWA)。
「いまの曲の感じも、この時期じゃなかったらできてなかったと思う」(HIROTO HOMMA)。
「曲作りに凄く時間をかけたんです。1曲1曲を作り上げる段階を経ていくうちに、アイデアがどんどん浮かんできて、13曲のなかでいろんな表情がある一枚になったと思います」(RIE YOSHIDA)。
2002年の結成以来、レーベル・メイトであるFRONTIER BACKYARD、CUBISMO GRAFICO FIVE、DOPING PA-NDAといったバンドとの交流を深めながら、6人は着実にスキルを磨いていった。ホーン・セクションを擁する最新のリズムを纏ったダンス・バンド、という形容さえ陳腐に感じられるほどのスケールの大きさがある。
「やっぱり〈街(での遊び)〉が大きいですね。遊びに行ったり、街を歩いていたりして、そういうところでかかっている音楽とか。クラブに行っても最高な音楽がかかってるじゃないですか。そういうものからの影響というか。自分たちの音楽も、街を歩いているときに聴いてかっこいいものでありたいと思ってますね。だから原動力は〈遊び〉じゃないですかね」(TAICHI)。
「素の部分で言えば、いまの段階では暗い曲はできないんだと思う。楽しくて幸せな生活を送っているから(笑)」(KEISHI TANAKA)。
ジャケットのカラフルなお花畑を最初のイメージとして取り掛かった今作は、色にサウンドを当てはめていくのではなく、自身の遊び場を作っていくように、色彩感を求めていく過程で、自然とフル・アルバムとしての体裁を成していったという。
「ラテンにしたいとか、あえてそこでハウスの4つ打ちをやろうとかそういう簡単な感じではなくて。ただ踊るのが楽しかったり、クラブでみんなが幸せそうに踊ってるのを見るのが好きだったり、自分もそのなかに入ったりするような、そういう空気をみんなに紹介するにあたっての曲なんです」(TAICHI)。
先鋭的なエレクトロ・ファンク“SUPER MOOD”、一発録りされた“EARLY ON”など、アルバムには彼らの音楽的欲求がさまざまな表情で気の赴くままに表現されている。その伸び伸びとしたムードは、バンド内の屈託のない空気と抜群の結束力を映し出している。
「自分がいちばん好きな音楽は何かというのを考えるようにした」(TAICHI)と語るように、ニュートラルな状態で作られたアルバムには、彼らが遊ぶ渋谷の街の喧噪や、夜遊びに出かけるときの陽気な胸騒ぎといったヴァイブが封じ込められている。ダンスもパンクもロックも、とにかく自分たちらしさを詰め込んだ……そんな雰囲気は、僕らがハイ・ファッションをカジュアルに採り入れたり、ステイタスのあるブランドをストリート・レヴェルにまで引き寄せたりといったことを無意識にライフスタイルに採り入れているように、ごく自然なこととして感じられる。
「いまライヴの本数が多くて、凄く良い状態で向かっている感じがありますね。ライヴは生でしかできないことをやろうと思っているから、アルバムが出来てやれることは増えると思うんですけれど、それとは別にライヴはライヴで流れているものがあるので」(KEISHI)。
さあ、お楽しみはこれからだ。
PROFILE
riddim saunter
HIROSHI SATO(ギター)、TOSHIHISA NAGAMI(ベース)、KEISHI TANAKA(ヴォーカル)、TAICHI FURUKAWA(ドラムス/パーカッション/サンプラー他)、RIE YOSHIDA(テナー・サックス/フルート)、HIROTO HOMMA(トランペット)から成る6人組。2002年に結成され、ライヴハウス中心の活動で徐々に話題を呼ぶ。2003年のコンピ『Niw Stocks』に初音源となる“FLAPPING IN THE LOVE”を提供し、〈蓮沼〉〈SKAViLLE TOKYO〉をはじめとする数々のイヴェントにも出演。2005年にシングル『FRESH/CLUE IN PEOPLE』をリリース。コンピ『ROCK MOTOWN』への参加を経て、ファースト・アルバム『CURRENT』(Niw!)を12月9日にリリースする。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2005年12月08日 14:00
更新: 2005年12月15日 18:20
ソース: 『bounce』 271号(2005/11/25)
文/駒井 憲嗣