インタビュー

Kierra Kiki Sheard


「9歳の時、母のアルバム『Finally Karen』に入っている“The Safest Place”を父の教会でレコーディングしたのがデビューのきっかけ。母といっしょにステージに立って、大勢の観客の前で歌ったことをいまでも覚えているわ! この曲はラジオでもオンエアされて、神様がさらなる扉を開いてくださったの。母といっしょに歌うのも楽しかったけど、私をソロ・デビューまで導いてくださったことを嬉しく思うわ」。

 このたび『Let Go』で日本デビューを果たすことになったゴスペル界の若きホープ、キエラ・キキ・シェアード。〈母〉とはもちろん、フェイス・エヴァンスをはじめとする多くのR&Bシンガーたちが敬愛してやまないアーバン・ゴスペル界の大御所、カレン・クラーク・シェアードのことだ。そんな母の作品への参加を重ね、昨年全米ゴスペル・チャートで1位に輝いたアルバム『I Owe You』にて待望のソロ・デビューを果たした。「小さい頃はバスケットボールやバレーボール、ソフトボールのようなスポーツが大好きで、将来の夢を意識したこともなかったわ(笑)」と話す彼女だが、マティ・モス・クラークが祖母、J・ドリュー・シェアード師が父、それにクラーク・シスターズが叔母というゴスペルの名家に生まれた時点で、シンガーとして活躍することは宿命づけられていたのかもしれない。しかも母親が最強の〈先生〉になってくれるのだから。

「そうね。歌手になろうと考えるようになってからは母の歌を注意深く聴くようになったと思う。歌唱法そのものよりも、人前でのパフォーマンス方法や、ノドを大切にする方法……例えばお茶には砂糖じゃなくてはちみつを入れるとかね(笑)。そういったことを習ったわ。最高の母であると同時に、私にとっては最高の歌の先生ね!」。

 敬虔なクリスチャンではあるけれど、世俗音楽にも自然に親しんできたというキキ。ジェイ・Zからビヨンセ、アヴリル・ラヴィーン、ブリンク・182までそのフェイヴァリットは幅広いが、そんな彼女だからこそカラフルでフレッシュな楽曲が揃った『I Owe You』をノビノビと歌いこなせたのだろう。同作のプロデューサーにはロドニー・ジャーキンスなど現行R&B界で活躍する面々が名を連ね、エッジーなサウンドを提供していた。

「私の母とロドニーの共通の友人を通じてプロデュースをお願いすることになったの。ロドニーはまるでお兄ちゃんみたいだったわ。彼が手掛けたブランディやデスティニーズ・チャイルドの曲が大好きだから、ホントに嬉しかった!」。

 そして、その『I Owe You』とリミックス・アルバム『Just Until...』の内容を再構成したものが今回の日本デビュー作『Let Go』なのだが、よりメインストリームを意識したヴァラエティー豊かなリミックス・トラックと彼女の歌のハマリ具合はとりわけ鮮やかだ。ちなみにキエラ自身は「“Let Go(Rock Soul Remix)”が大好き!」なのだそうで、現在18歳のピュアな感性と卓越した歌唱力が反映されたトラックの数々は、クリスチャンではないリスナーにもボーダレスに愛されるに違いない。

「他教徒の人たちもゴスペルを聴いているって、とてもエキサイティングなことだと思う。国境や宗教を越えて、音楽としてのゴスペルを楽しんでいる人たちがいるなんて、ホントに嬉しいわ!」。

 ビヨンセとブランディにシンパシーを抱き、「メアリーJ・ブライジ、メアリー・メアリー、ビラル、それからファンテイジアと共演してみたいわ」とも語るキキ。一方では、高名なゴスペル・ファミリーに生まれ育ったことを素直に幸運と感じながらも、母や叔母たちの歌唱力と比較されることで切磋琢磨しようという気持ちも垣間見せる。そんな彼女なら天賦の才能を磨き続けて、今後ますますビッグな歌姫に育っていくことだろう。まずはその歌声に触れてみて!

PROFILE

キエラ・キキ・シェアード
87年、デトロイト生まれ。クラーク・シスターズで活躍したカレン・クラーク・シェアードを母に、J・ドリュー・シェアード師を父に持ち、幼い頃から父親の教会でゴスペルに親しんで育つ。97年、母カレンの『Finally Karen』にて初のレコーディングを経験。以降も2002年の『2nd Chance』、2003年の『The Heavens Are Telling』とカレンのアルバムで徐々に経験を積んでいく。2004年にEMIゴスペルと契約を果たし、ラマイヤとの共演を経て、ファースト・アルバム『I Owe You』をリリース。今年に入ってリリースしたリミックス・アルバム『Just Until...』が日本でも話題となったのを受け、日本編集盤となる『Let Go』(東芝EMI)を12月7日にリリースする予定。

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掲載: 2005年12月15日 13:00

更新: 2005年12月15日 18:57

ソース: 『bounce』 271号(2005/11/25)

文/佐藤 ともえ