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インタビュー

GREAT ADVENTURE


 足元にまとわりついて離れないマディーなグルーヴとそれを激しく払いのけるように振り下ろされるギター・リフ。ロックの悪魔に取り憑かれた3人の頭には、しかし、なぜか無数のビートやサンプル・フレーズが飛び交っていて、呟いてみたり、叫んでみたり……どう考えてもイッちゃってる。そんな画が容易に浮かんでくる、極めて現代的でサタニックなロックンロールを北埼玉の地から放つのが、3人組バンド=GREAT ADVENTUREだ。

「最初は僕とNOMOTOで、いまとは違って普通な(笑)3ピースのバンドを組んでいたんですけど、ベースが抜けちゃって。で、ある時出会ったTARUMIがキャプテン・ビーフハートというか、ファンカデリックみたいなベースを弾いていて。これは〈違ったこと〉ができるな、ということで彼が加わっていまの形になったんです。違ったこと? 僕らは音楽だったら何でも聴くんですよ。ファンク、パンク、ブルース、テクノ……かたや60年代とか70年代の王道なものも好きだし。というか基本には60年代、70年代のバンド・サウンドがありつつ、いまそれをそのままやってもおもしろくないんで、いまのテクノロジーをミックスすれば違ったものができるんじゃないかっていう」(OTA)。

 その後は試行錯誤を重ねながら、ライヴを行わないままスタジオに籠もってファースト・アルバム『GREAT & FUNKY』を作り上げた彼らだが、アルバムのリリース後に精力的に重ねたライヴの成果が躍動感となって、ニュー・アルバム『ROCKS』に投影されている。

「今回の『ROCKS』は、『GREAT & FU-NKY』以降にやり始めたライヴの影響をバンド・サウンドとして前に出したくなったという意味では、自分たちの転機というか、再確認というか。ただ、曲作りに関しては決まった形はなくて、スタジオでジャムりながら一気に作り上げちゃうものもあるし、メンバー各自が打ち込みで作って、それを持ち寄って形にすることもあるし、作り始めもピアノからとかドラムからとか何でもありだし、本人が担当している楽器のイメージどおりにはいかないんです。NOMOTOなんか、ライヴではめちゃめちゃ激しいドラムを叩きますけど……」(OTA)。

「僕はボブ・ディランが好きだったりするので、作ってくる曲は激しいものじゃなかったりすることもあるし」(NOMOTO)。

「3人とも〈型〉がないんです」(TARUMI)。

 メンバーがそう語るとおり、このアルバムはサンプラーと楽器を同列に扱う世代特有の高い自由度に貫かれている。リード・トラック“ANY PLACE ROCKS”に集約されている雪崩れ込むようなガレージ・ナンバーから、アシッド・シンセがバンド・サウンドと共に走る本当の意味でのアシッド・ロック“MR.GUARD”、はたまたインストのマシーン・ファンク“WALK”やチルアウト感覚を内包したフォーク・バラード“SUNSET GLOW”……一言では形容しがたい抽象画を描く彼らは、しかし、破壊と再生を繰り返しつつ、転がりながら前へ進んでいるという意味において、純然たるロック・バンドだ。

「ルーツ・ミュージックは大好きだけど、逆にそれをぶっ壊してやるっていう衝動もあるし、両極端なものが存在してますね。だから、この先ファンクの要素はゼロになるかもしれないし、弾き語りで突然ライヴをやっちゃうかもしれないし。はたまた生音を一切使わず打ち込みだけでやっちゃうかもしれないし。でも、軸が外れてなければ何をやってもいいんだなって思いますね」(OTA)。

 その軸というのは……?

「ソウルですね。ジャンルじゃなくて……魂の音楽。直訳的な意味で、ね」(TARUMI)。

PROFILE

GREAT ADVENTURE
OTA(ヴォーカル/ギター他)、TARUMI(ベース/ヴォーカル他)、NO-MOTO(ドラムス/ヴォーカル他)から成る3ピース・バンド。北埼玉にて結成され、2003年にシングル『ROWB.ep』でデビュー。2004年7月にはファースト・アルバム『GREAT & FUNKY』をリリースし、カサビアン、リバティーンズ、ミュージックらの来日ツアーのサポート・アクトを務めたことでも話題を呼ぶ。ライヴ・パフォーマンスが高い評価を得て、2005年には〈サマーソニック〉〈RISING SUN〉といったイヴェントにも出演、ロンドンでもライヴを行った。シングル“TORTOISE”のリリースを経て、セカンド・アルバム『ROCKS』(東芝EMI)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年12月15日 13:00

更新: 2006年01月12日 20:37

ソース: 『bounce』 271号(2005/11/25)

文/小野田 雄