インタビュー

Lightning Bolt


 親の仇を討つかの如く叩きまくる疾風怒濤のドラムと、歪みまくってもはや何の楽器だかわからない高速ファズ・ベース。ロードアイランド州プロヴィデンス出身の激音ドラム&ベース・デュオ=ライトニング・ボルトが、通算4枚目となるニュー・アルバム『Hypermagic Mountain』でついに日本デビューを果たした! これまでに行われた2度の来日公演では、ステージではなくフロアにセットを組んで、前のバンドの演奏が終わった瞬間にライヴをスタートさせるという斬新なスタイルを披露。同時に耳をつんざく凄まじい轟音でもってオーディエンスの度肝を抜いた彼らだが、この新作でもカオス渦巻く爆裂ジャンク・ノイズを全編で轟かせている。ドラムとベースだけで信じられないほどのエネルギーを生み出し、限界を突き破っていくこの2人。そもそも何がきっかけでこのような編成のバンドを始めようと思ったのだろうか?

「ルインズやゴッドヘッド・サイロなど、僕らが聴いてきたドラムとベースのバンドからの影響は確かにあったと思うね。結成から1年半ぐらいはヴォーカルとしてヒシャム・バルーチャを加えた3人編成で活動していたんだけど、ヒシャムは脱退してその後はブラック・ダイスで活動していたよ。基本的に僕らは2人でプレイしてきたし、それがすごく楽しかったから、他のメンバーを見つけようと思ったことはないんだ。2ピースっていうのは、ミュージシャンとして本当に自由に解き放たれる感じがするんだよ」(ブライアン・チッペンデイル:以下同)。

 少ない楽器でエクストリームな音楽をプレイする彼らのようなバンドの場合、ともすれば曲が単調になり、一発芸的なものになってしまう危険性もある。しかし彼らの作る楽曲は、メチャクチャなようでいて実は妙なキャッチーさを備えており、曲ごとにしっかりとしたメリハリがある。つまり、アルバムをとおして聴いてもまったく飽きさせることがないのだ。

「僕らは1曲1曲に個性を持たせたいと考えて曲作りをしているんだ。前作『Won-derful Rainbow』をリリースしてから2~3年間は、アルバム数枚分の曲を作っては壊し、また作っては壊し……という感じだった。僕らはレコーディングに入るだいぶ前から膨大な量の曲をプレイするようにしてるんだよ。何年経っても聴ける曲かどうかを確かめるためにもね」。

 こうして完成された今作は、アヴァンギャルドな過激さと、ハードコアなスピリット、ダンス・ミュージックの昂揚感が融合された、間違いなく過去最高傑作に仕上がっている。メタルにプログレ、テクノやアフリカン・ミュージックなどなど、彼らは実に多種多様な音楽ルーツを持っているのだが、BOREDOMSやメルツバウをはじめとするジャパノイズ系バンドからも相当な影響を受けたそうだ。ジャパノイズ以外にも、日本のバンドに対する思い入れはひとしおのようで、ギターウルフのトリビュート盤に参加したり、最近ではあふりらんぽといっしょにツアーを回ったりもしている。

「アメリカのバンドと比べて、日本のバンドは昔から音楽に対してすごいエネルギーと情熱を注いでいると思う。いまやっていることにとても真剣に取り組んでいて、そこに自分のすべてを注ぎ込んでるんだよ。僕たちもそうありたいと思っている。〈これがこの世での最後のプレイなんだ〉くらいの意気込みでね」。

 ライヴでの尋常じゃない彼らのテンションは、日本の素晴らしいバンドたちの精神を受け継いだものでもあるのだ。さまざまなジャンルを呑み込み、それらを爆音で放出するライトニング・ボルト。『Hypermagic Mountain』を機に、彼らの鳴らす快楽的轟音の中毒者が日本でも急増することだろう。

PROFILE

ライトニング・ボルト
ブライアン・チッペンデイル(ドラムス)、ブライアン・ギブソン(ベース)から成る2人組。95年にロードアイランド州のプロヴィデンスで結成。ヒシャム・バルーチャを含む3ピース・バンドとして活動を開始するが、96年頃に現在の編成となる。99年にファースト・アルバム『First Record』をリリース。その後、ブライアン・ギブソンがアニメの製作会社に就職したためにバンド活動を一時休止するが、2001年にセカンド・アルバム『Ride The Skies』をリリース。2004年にはギターウルフのトリビュート盤『Planet Of Wolves』に参加。このたび日本デビュー盤となるニュー・アルバム『Hypermagic Mountain』(Load/Pヴァイン)をリリースしたばかり。

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掲載: 2005年12月22日 16:00

更新: 2005年12月22日 16:57

ソース: 『bounce』 271号(2005/11/25)

文/粟野 竜二