インタビュー

Jack's Mannequin

ピアノ・エモのパイオニアによる話題の新プロジェクトとは? その裏側に迫ってみよう!


 ドライヴ・スルーからリリースされた2枚のアルバムがいずれも高い評価を受けたサムシング・コーポレイト。デビュー当初は、当時まだ珍しかった〈ピアノをフィーチャーしたエモ・バンド〉という部分がクローズアップされることが多かった彼らだが、2003年に発表されたセカンド・アルバム『North』で、バンドの中心人物であるアンドリュー・マクマホンのメロディーメイカーとしての才能が全面開花! 彼の名前はエモ・シーンの枠を越え、〈次世代のベン・フォールズ〉として幅広い層のロック・ファンから認知されることとなった。その彼がバンドを休止して始動させたプロジェクトが、このジャックス・マヌカンだ。

「僕はハイスクールの頃からサムシング・コーポレイトとしてレコーディングやツアーを行ってきた。3年間で3枚のアルバムを制作したので、ほとんど家に帰っていない状態だったんだ」。

 その結果、バンド内の関係が崩壊し、彼は数か月に渡ってひとり曲作りに没頭した。

「鬱憤を晴らしたかっただけなんだ。これらの曲でレコーディング以外の何かをしようとは思っていなかったよ」。

 極めて個人的な作業として行われたレコーディングだが、いくつかの曲がまとまって形になった時にレコード契約を決意したという。そんなジャックス・マヌカンのファースト・アルバム『Everything In Transit』は、サムシング・コーポレイトの作品と同様にアンドリューのピアノと甘いヴォーカルをフィーチャーしつつも、新たにアコーディオンやストリングスなどを採り入れたほか、ダンサブルな“Bruised”のようにこれまでの彼のキャリアにはないタイプの楽曲も収録されている。つまり、バンドを離れて自由になったアンドリューの新たな魅力が引き出された作品となっているのだ。

 このアルバムに収録されている楽曲は、本当にどれも素晴らしい。日本ではまだ輸入盤しかリリースされていないにも関わらず、口コミやネットを中心に徐々に評判が広がり、リリース以来ロング・ヒットを記録している。〈ピアノ・エモの先駆者〉は、誰からも愛されるアーティストへと成長を遂げたのだ。ちなみに、本作リリース後に彼が白血病で入院したというニュースが入ってきたが、現在は無事に退院したとのこと。ファンとしてはひと安心といったところだ。困難を乗り越えた彼が今後どのような活動を展開していくのか、本当に楽しみでならない。
▼サムシング・コーポレイトの作品を紹介。

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掲載: 2006年01月19日 18:00

ソース: 『bounce』 272号(2005/12/25)

文/粟野 竜二