インタビュー

NATSUMEN


 2005年3月のファースト・アルバム『Endless Summer Record』リリース以降も、8人のメンバーが爆音で繰り広げるダイナミックでカオティックな縦横無尽のインストゥルメンタルで、熱狂的なファンを増殖させているNATSUMEN。このニュー・アルバム『NEVER WEAR OUT yOUR SUMMER xxx !!!』は、2002年の結成時から噂が噂を呼んでいた彼らのライヴを体感できるというだけでなく、心の琴線に触れる彼らの楽曲をダイレクトに感じることができる決定版とも言える作品だ。

「いまのメンバーになって1年半ぐらい、ときどき考えたり軌道修正したりするんですけれど、あんまりその人を変えてまではやってほしくないというか。目標は全員真っ白けで演奏することなので。分析してみればフリーな演奏の曲と、メロディーのある曲って分かれていると思うんですけれど、それより懸念事項のまったくない状態で〈人間〉が出ている演奏をしたいと思っていて、それは今年になってようやくできるようになったって感じですね」(AxSxE:以下同)。

 前作は彼らがライヴであまりプレイしていない楽曲を中心に、AxSxEがダビングとエディットを加えて完成させたものだった。それに対して新作は、彼らがライヴでプレイを続けてきた代表曲で構成され、あくまでもライヴを基本に活動を続けてきた彼ら自身にとっても念願の作品であった。

「昔のフリージャズって、ライヴとかスタジオ・ライヴ(の作品)でもあえてライヴ・アルバムと謳っているわけではなかったり。だからそういうふうに作りたいなっていうか。〈ライヴで録りました!〉って謳うより、〈ライヴが基本だからライヴで録った〉ぐらいの感じなんですよ。それと同時に演奏をやってるほうが空気感もあるというか。(テイクの選び方の基準は)……毎回いっしょの気持ちでやってるんですけれど、なんだろうな、やってる側と客の雰囲気かな」。

 今作はそのライヴ・レコーディングをベースに、アコギやフルートといった音色を加え、彼らが思う世界観にさらに近づけていったという。結果、NATSUMENらしいインプロヴィゼーションの持つスリリングなムードと、忍び寄る黄金の黄昏のような切なさが喚起される仕上がりとなっている。他のさまざまなアーティストの作品でもその独特のプロデュース・ワークを発揮するAxSxEは、「(プロデュースするときは)その人の〈人間〉が出るように。細かい作業とかもあるけれど、そういうところは見えなくていいというか」と、あくまでも人間臭さ、そしてプレイする瞬間のダイナミズムを常に感じているようだ。

「ステージではなんにも意識していないんですよ、日本語でも脳でも。日常の自分とは違うんですけど、無理して何かをやるというのは全然ないです。僕にとってはメロディーのあるところもカオスなところもみんないっしょなんですけど、超カオスなときでも凄く泣けるところがあったり、逆にメロディーにリズムを感じたりするんです。もちろん練習中とか曲を作っているときはいろいろな仕掛けとかも考えていたんだと思うんですけれど、そういうのは忘れちゃいました(笑)」。

 今作はステージの臨場感、プログレッシヴな音の構築、そして心を揺さぶられるメロディーラインの美しさを、高純度で銀盤に収めることに成功している。パワフルでメランコリックな46分の至福により、NATSUMENの魅力があらためて白日の下に晒されるときがきた。

「(最終的に見える画は)何でもいいんです。はじまりのテーマは〈夏を古くするな!〉っていう、ほんまそれだけが出発点だった。そこから自分の感じることも日々違ってくるので、そういうのでちょっとずつ(バンドも)変わっていると思うんです。昔は変拍子やテンポ・チェンジとかに、練習で習得したものとか、反復練習して作ったもの(を活かす)とか、いろんなことを綿密に考えて曲を作っていたときもあったんですけれど、いまは何にも囚われないものをやりたいと思ってます」。

PROFILE

NATSUMEN
2002年、BOATのAxSxE(ギター)とアイン(ギター)、BEAT CRUSADERSのマシータ(ドラムス)を中心に結成。そこに山本昌史(ベース)、蔦谷好位置(キーボード)、カッキー(トランペット)、加藤雄一郎(アルト・サックス)、INADA(テナー・サックス)が加わって現在の編成になる。ライヴ中心の活動を続け、そのパフォーマンスが高い評価を得る。2005年1月に編集盤『KILL yOUR WINTER!!!』を限定リリースし、3月にはファースト・アルバム『Endless Summer Record』をリリース。〈サマーソニック〉〈ライジング・サン〉などへの出演でも話題を呼ぶ。2006年1月18日にセカンド・アルバム『NEVER WEAR OUT yOUR SUMMER xxx !!!』(TOPMEN/UMA)をリリースする。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年01月26日 12:00

更新: 2006年01月26日 19:02

ソース: 『bounce』 272号(2005/12/25)

文/駒井 憲嗣