インタビュー

VOLA & THE ORIENTAL MACHINE

豪腕ドラマー=アヒト・イナザワがヴォーカル/ギターに転じた、ニューウェイヴな新バンド!


「ナンバーガールやZAZEN BOYSのときの僕って、何か天然でのほほんとしたイメージがあったと思うんですけど……実際、そういうことは全然なくて、わりとピリピリしてるもんなんですよ(笑)。だから、音楽をやるっていうことに対して遊び的なニュアンスはないですよね。しかも、今回は自分でバンドをやり始めたわけだから……やっぱり、負けちゃいられないっていうのもあるし、ここらでちゃんと攻めていかないと。もう攻めですよ、攻め(笑)」。

 そんな力強い言葉とともに、アヒト・イナザワが帰ってきた! ドラムスからヴォーカル&ギターへと大胆な転身を遂げたアヒト率いる新バンド、VOLA & THE ORIENTAL MACHINE(ギターはdownyの青木裕、ベースは福岡のMOON BEAMより有江嘉典、ドラムスはSyrup16gの中畑大樹)。その初音源となる『WAITING FOR MY FOOD』は、大方の予想を裏切る、実に〈攻め〉のミニ・アルバムへと仕上げられた。フランツ・フェルディナンドやブロック・パーティーといった最新型のニューウェイヴ・サウンドに直接リンクするような、細やかで切れ味鋭いギター・サウンド。そして、削ぎ落とされた音飾でキリキリと繰り広げられる緻密な高速アンサンブル。

「今回は最初からそういうのを狙ってたんですよね。最近のニューウェイヴ・リヴァイヴァルみたいなものって、僕はもう大賛成で。だから、日本人でありながらそれと同じ感覚になれるものっていうイメージは最初からあったんです。真似じゃなくて日本発でそういうのをめざしてるバンドっていない気がするし、そういうバンドがひとつくらいいてもいいんじゃないかって」。

 しかし、その楽曲構成もさることながら、何よりも驚き、そしてもっとも印象に残ったのは、痙攣気味で自由奔放に歌い上げるアヒトのヴォーカルと、思いのほかポップなメロディーなのであった。

「やっぱりメロディー、特に歌メロは凄く大切にしてますよね。それは曲を作ってる最中から、もう大前提で。アレンジでどんなに変なことをやっても、歌メロだけはもの凄くポップにしたかったんです。それこそ、アカペラでもちゃんとメロディーになっているようなものを。変だけどカッコいい演奏とポップなメロがいっしょになったものを、俺はやりたいんですよね」。

 と、ここまで話していて、ようやくこのバンドの全貌が見えてきた気がする。これはナンバーガール、ZAZEN BOYSといったバンドで豪腕ドラムを響かせてきた彼が、〈ドラマーとして〉やりたかった音楽ではなく、みずからが聴きたかった音楽なのだ。

「まさしくそのとおりですね。バンドでドラムを叩いてたときから、〈自分がやるんだったら……〉みたいな思いはあったし、自分で曲を作ってギター&ヴォーカルをやってるっていうのは、つまりそういうことなんですよね。だから、ドラマーとして作ったアルバムではないですね。そのモードの使い分けは、はっきりできてると思います。まあ、欲張りっちゃ欲張りっていうか、あんまりないパターンだとは思うけど(笑)。でも、デイヴ・グロールとかにしたって、別にドラム重視でフー・ファイターズの曲を作ってるわけじゃないじゃないですか? たぶん、それと同じような感覚だと思うんですよね」。

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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年01月26日 15:00

更新: 2006年02月02日 19:04

ソース: 『bounce』 272号(2005/12/25)

文/麦倉 正樹