インタビュー

SLOTH LOVE CHUNKS

キャリア十分な〈新人バンド〉が切り拓く新しいヴィジョンとは?


 元ナンバーガールの中尾憲太郎(ベース)を中心に、元BELTERS★の佳世(ヴォーカル/ギター)、元LAUGHIN' NOSEのKenji(ドラムス)、元kiwirollのog(ギター)が集まったSLOTH LOVE CHUNKS。結成から2年あまり、数多くのライヴで結束を強めてきた彼らが、シングル“Loveless ideals”に続けて、待望のファースト・アルバム『四角いVISION』をリリースした。

「まず(福岡時代からの友人である)佳世ちゃんにバンドをやろうって声をかけて。それから他のメンバーを集めました。みんな前からの知り合いだったんで」(中尾)。

 バンド結成のいきさつを尋ねるとこう語ってくれたが、しかし凄いメンツが揃ったものだ。そのことは「まさかLAUGHIN' NOSEだった人とバンドをやるとは思ってなかった(笑)」(佳世)という発言からも窺えるが、当人たち同士もこのメンツでプレイすることを心の底から楽しんでいるようだ。中尾が好む90年代のUSインディー・ロックに通じるサウンドを軸に、ロウファイ・ポップやニューウェイヴ的なテイストも感じさせる不思議な魅力を持った佳世のヴォーカル、百戦錬磨の強者であるKenjiの凄まじいドラミング、エモーショナルで一風変わった雰囲気もあるogの独創的なギターが加わる。いずれもキャリアのあるプレイヤーたちが集まったからこそ鳴らせる音だが、単純に4人がそれぞれやっていたバンドの要素を足したものにはなっていない。

 とはいえ、このバンドにはともすれば〈元ナンバーガールのベーシストのバンド〉という枕詞がついてまわりかねないが、それに関しても特に意識はしていないという。

「無視するのも変だし。それに、どうやってもナンバーガールみたいにはならないんで。みんなが前のバンドを知っていても、聴いてもらえればまったく新しいバンドだと受け取ってもらえると思う」(中尾)。

 満を持して登場した『四角いVISION』は、激しくもポップな疾走感溢れるサウンドの随所に、4人の凄腕が持ち込んださまざまな要素が溶け込んだ傑作となっている。ただ、アルバムももちろん必聴ながら、「本当にライヴありきなんで、ちゃんと観に来てほしい」(Kenji)、「アレンジも毎日変わるし」(og)と彼らも自信を覗かせるライヴこそが、SLOTH LOVE CHUNKSの真骨頂でもある。作品を楽しんだ後は、あなた自身の目と耳と肌で、この〈新人バンド〉が放つ熱を感じてほしい。

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掲載: 2006年03月09日 13:00

更新: 2006年03月09日 22:14

ソース: 『bounce』 273号(2006/2/25)

文/粟野 竜二