インタビュー

Soft


 大御所のストロークスが新作をリリースし、クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤーやウィー・アー・サイエンティスツといった個性的な新人バンドが続々と成功を収めるなど、なにかと賑やかなここしばらくのNYロック・シーン。そんななか、どこのレコード会社とも契約を結んでいない状況でハード・ファイやマーク・ガードナーの前座を務め、〈ストーン・ローゼズの再来〉という最大の賛辞を浴びている5人組、ソフトがファースト・アルバム『Hot Club And The Smoke Machine』をリリースする。以前は大阪に住んでいたというお好み焼き好きのフロントマン=ジョニー・レイネック(以下同)が、バンドのコンセプトをこう語ってくれた。

「サッカー・スタジアムで8万人の大観衆が同時に声を張り上げて合唱し、アメリカ人が5年ぶりに心の底から音楽を感じながら踊り狂っている感覚。これはマジで言ってるんだぜ。俺たちはスタジアムで観客を熱狂させ、すべてのシングルをTOP10に送り込もうと思ってソフトをやってるんだ」。

 オアシスやシャーラタンズを彷彿とさせる普遍的なメロディーラインとストーン・ローゼズ級のキラメキ、そして強烈なグルーヴがガッチリ組み合った歓喜のスタジアム・ロック。とはいえ、最近ここまで大口を叩くヤツも珍しいような気がするが、それもこれも自分たちの音楽に対する絶対的な自信の表れなのか?

「自信っていうのは俺たちのなかでも大きな要素だよ。もちろん、楽曲に対してメンバー全員が絶対的な自信を持っている。俺たちの楽曲って巨大なスタジアムでプレイされるために作られたんだしね。特に〈グルーヴ感〉は大事にしているよ。ひとつの曲が完璧なグルーヴを出すためには6か月を要すると思ってる。メロディーを作るのは簡単だけど、グルーヴを作り出すのは至難の作業だね。自分たちのレヴェルを維持するために、今でも僕らは1週間のうちに5日間は曲作りを行ってるよ」。

 彼らがこだわり続けるのはオーディエンスを熱狂的に踊らせること。そもそも5人がバンドを結成したのは2004年。UKではフランツ・フェルディナンドが、そしてNYではキラーズがそれぞれ大ブレイクし、シーンにはニューウェイヴ・リヴァイヴァルの風が吹き荒れていた。ともすれば、人々を踊らせるもっとも簡単な手段はムーヴメントにあやかることであったはず。なぜ彼らはNYにいながら〈ウェルカム・バック・トゥ・マッドチェスター〉と言えるアシッドなグルーヴに辿り着いたのか。

「結成当初は自然に感じたこと、自分たちの好きなことをそのままプレイしていただけなんだけどね。そうやってるうちに当時NYで他のバンドがやってること、つまりジョイ・ディヴィジョンやギャング・オブ・フォーのパクリとは正反対の方向に向かってるのに気付いたのさ。〈これで俺たちがシーンを壊せる! 完璧だ!〉って思ったね。そうしたらミュージックとかカサビアンが出てきて、やっと俺たちの兄弟が見つかったって感じた。この2バンドにはもの凄く期待してるよ」。

 みずからの感性を信じてムーヴメントに脇目も触れずに突き進む姿は、90年代への重い扉を開いたストーン・ローゼズのデビュー時を思い起こさせる。

「ストーン・ローゼズは音楽シーンが腐敗していた時期に出てきたし、彼らがシーンを変えていったのは確かだ。今でもUKでは彼らが代表的なバンドだと思うしね。俺たちも同じようなことを成し遂げたいと思っているんだ」。

 どうやらそれは遠い夢物語でもなさそうだ。なぜなら蔓延するディスコ・ビートを切り裂く彼らのサウンドには、スタジアムで8万人を歌って踊らせるエネルギーと昂揚感が満ち溢れているのだから。2006年、グルーヴの神はマンチェスターではなくNYに舞い降りた!

PROFILE

ソフト
ジョニー・レイネック(ヴォーカル)、ヴィンセント・ペリーニ(ギター)、サム・ウィーラー(ギター)、ディーノ・シャンポス(ベース)、クリス・コーリー(ドラムス)から成る5人組。大阪でノイズ・ミュージシャンとして活動していたジョニーを中心に、2004年夏にNYで結成。同年末に自主制作でファーストEP『Droppin'』をリリース。2005年初頭から本格的にライヴ活動を開始。ほどなくしてマルーン5やハード・ファイ、マーク・ガードナーのオープニング・アクトに抜擢される。また、一部のブログ・サイトで2005年度書き込み件数No.1を記録。さらなる話題を集めるなか、3月8日にファースト・アルバム『Hot Club And The Smoke Machine』(FABTONE)をリリースする。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年03月16日 23:00

更新: 2006年03月16日 23:17

ソース: 『bounce』 273号(2006/2/25)

文/白神 篤史