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インタビュー

PaperBagLunchbox

静かな衝撃から大きな波紋へ……彼らのパノラマ世界に迷い込もう!


 GREAT3の名盤『METAL LUNCHBOX』を想起させる名前を持つ23歳の4人組から流れ出してくるのは、どこかパースの狂った音像、幻惑的な浮遊感、優しい歌声、凶暴なノイズ……各地のCRJチャートを席巻するなど、耳の早いリスナーに静かな衝撃を与えた昨年のミニ・アルバム『PBLEP』と同じく、初期SUPERCAR仕事で知られるカナイ・ヒロアキをプロデューサーに迎えたファースト・フル・アルバム『ベッドフォンタウン』で、PaperBagLunchboxがその全貌を現す。

「『PBLEP』は音が近いっていうか、〈ドーン!〉ていう(平面的な)イメージがあったけど、今作はわりと遠くから景色の全体像が見えるパノラマ感がある。いままでは1軒の家しか見えてなかったのが遠くから見ると家が繋がってて、〈あ、城だったんだ〉みたいな感じ」(中野陽介、ヴォーカル/ギター:以下同)。

 2001年に大阪芸大で出会った中野と倉地悠介(ベース)、恒松遙生(キーボード)、伊藤愛(ドラムス)の4人は、試行錯誤を繰り返しながら関西~東京でのライヴ活動などを通じて独自の音楽性を構築。全員にとってPaperBagLunchboxが本格的に結成した初のバンドだからか、今作のゆったりした曲調のなかに轟く不思議なアンサンブルからは音楽へのフレッシュな解釈が聴こえる。

「伊藤さんからはまったく予想しないようなドラムが出てくる。でも本人はそういうもんだと思ってやってるし、俺もそうだと思って歌ってて。お互い全然普通じゃないのに普通だと思って自分のことを話してた、みたいな感じ」。

 危険極まりない恒松のアンビエントなエフェクトなど、初期衝動に溢れた各々の大胆な実験が奇跡的なバランスとなっているのが彼らの魅力だ。『ベッドフォンタウン』に広がる静と動の音のパノラマをフレッシュな耳で楽しんでほしい。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年03月23日 22:00

更新: 2006年03月28日 20:32

ソース: 『bounce』 273号(2006/2/25)

文/内田 暁男