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インタビュー

MORNING RUNNER


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 世界中のロック・バンドが憧れるロック・フェスの聖地、レディングから彗星の如く現れた4人組が、このモーニング・ランナーだ。「NME」誌に〈野心的で懐が深く、ウットリさせられるようなポップ〉とまで言わせ、早耳のリスナーの間では〈ポスト・コールドプレイ〉との呼び声も高い彼らが、このたびファースト・アルバム『Wilderness Is Paradise Now』をリリースした。バンド名は単純かつユニークであるが、本人たちは予想に反して大マジメ! フロントマンのマシュー・グリーナー(以下同)が、名前の由来をこう語ってくれた。

「18歳から3年半の間、僕は地元の病院で看護士として働いていたんだ。朝10時から夕方18時までの勤務で、毎日自宅から病院まで歩いて通っていた。どんなに寒い朝でも通勤途中にはランニングしている人たちを見ることができたんだけど、彼らの高い向上心を持つ姿勢に感心させられていたんだ。朝走っている人たちの忍耐力は、何かに対して努力を重ねている人たちの姿と共通するものがあると思うよ」。

 ジョギングしているオッサンを見てここまで考えてしまう感性もスゴイが、しかしながらこのポジティヴさにはかなり好感が持てる。コールドプレイやスノウ・パトロール、イアン・ブラウン、ミュージックといった数々のビッグ・アーティストのサポート・アクトを務めた際も、持ち前の前向きな姿勢でオーディエンスを圧倒し、大きな注目を浴びるきっかけを掴んだ。

「イアン・ブラウンのツアーに前座で帯同した時は口の悪いオーディエンスがヤジを飛ばしてきたりしたけど、そこで滅入ったりせずに良いライヴを観せることに専念したんだ。最後にはイアンのファンも楽しんでくれたよ。オーディエンスにはいろいろな人がいるから、自信を持って自分たちのライヴを楽しむことが大事だね」。

 結成当初の彼らはホワイト・ストライプスやヤー・ヤー・ヤーズを意識した3ピースのガレージ・ロック・バンドだったらしいが、幼少の頃からクラシックを聴いて育ったフィールズことクリス・ウィートクロフトの加入がバンドに劇的な変化をもたらすこととなった。

 「ガレージ色の濃かった3人編成のバンドが、キーボードの加入によってメロディアスなバンドに生まれ変わったんだ。フィールズの加入は、まるでパズルの最後の1ピースが見つかった感じだったよ! 譜面に音符が増えて僕のヴォーカル・スタイルは多彩になり、楽曲もより入り組んだものに一変したね。曲作りのアイデアを出しているのはフィールズひとりではなく、メンバー全員がソングライティングに貢献しているんだ」。

 こうして辿り着いたのが、群を抜いて美しいメロディーラインとキーボードを大胆にフィーチャーしたドラマティックなサウンド・スタイル。しかし、こういうサウンドを作ろうとすると過剰に煌びやかなものになり、コールドプレイの二番煎じに終わってしまいがちだが、彼らは変に着飾ることをせず、ライヴ感のあるパワフルで荒削りなアレンジで〈自然体〉を表現。そこには美しさと混沌が絶妙なバランスで共存している。これこそがジャンルレスな彼らのオリジナリティーなのである。

「〈ジャンル分けに苦労する〉って聞くと最高の気分になるよ。〈モーニング・ランナー〉っていう新たな音楽ジャンルを確立したいからね(笑)」。

 彼らの夢は、「世界中でライヴを行って、自分たちのクリエイティヴィティーをさらに高める」ことだそう。向上心に溢れたランナーたちはすでに夢へのスタートを切った! そう、やわらかい朝日を浴びながら。

PROFILE

モーニング・ランナー
マシュー・グリーナー(ヴォーカル/ギター)、トム・デレット(ベース)、クリス・ウィートクロフト(キーボード)、アリ・クルーワー(ドラムス)から成る4人組。2003年にレディングで結成。同年にインディー・レーベルのフェイス&ホープから7インチEP『The Great Escape』をリリース。その後、精力的なライヴ活動を経て2004年11月にパーロフォンと契約し、2005年初頭にEP『Drawing Shapes EP』でメジャー・デビューを果たす。コールドプレイやイアン・ブラウンのオープニング・アクトを務めるなど、徐々にUK国内での知名度を上げていくなか、このたびファースト・アルバム『Wilderness Is Paradise Now』(Parlophone/東芝EMI)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年03月30日 00:00

更新: 2006年03月31日 10:43

ソース: 『bounce』 274号(2006/3/25)

文/白神 篤史