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インタビュー

ULTRA BRAiN


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 Hi-STANDARDがその活動を休止してから丸5年が経った2005年、難波章浩はソロ・プロジェクトのTYUNKとして突如シーンに復帰した。4つ打ちのリズムが果てしない昂揚と陶酔をもたらし、歌詞というよりは声そのものが本能的な興奮を呼び覚ますそのサウンドは、彼が移り住んだ沖縄という土地の持つパワーを吸収し、全身全霊の力で炸裂させたような、強烈なダンス・ミュージックだった。

「手法としてではなく、自分の気持ちを素直に出せたのがTYUNKかな。僕はもともと洋楽が好きだし、ハイスタの頃から海外でリリースして向こうの人たちと肩を並べたいと思ってずっとやってきたけど、結局僕らは〈邦楽〉として扱われるでしょ? 日本人だから。だったらそこを思いっきり逆手に取って、日本の土着的な音楽を採り入れて、いままでの経験にプラスして僕らなりのオリジナリティーを確立できれば、世界に出て行けるんじゃないかって思ったんです。そういう日本の土壌にあるものをいちばん見つけやすかったのが僕にとっては沖縄だったし、それが上手く音に表れてきた時期がTYUNKだったんですよね」(難波章浩:以下同)。

 同年の9月、TYUNKは5人組へと発展し、ネオ・パンク・バンド=ULTRA BRAiNとしての新たな活動をスタートさせた。今年2月にリリースされたEP『GHOST BUSTERZ』でクラッシュをカヴァーしてはいたものの、このバンドの言う〈パンク〉はもっと根本的な、あの何もかもをブチ壊す勢いで世界を巻き込んでいった〈現象の熱〉のようなものを意味しているようだ。

「ハイスタっていう自分のイメージがあったからかもしれないけど、あれ(=TYUNK)が受け入れられにくかった日本のムードは、なんか〈やっぱそうなんだ〉って感じでしたね。だからこそ、自分にはもっとパワーが必要なんだと思った。そこを突破するにはそれこそバンド感だったり、外に向かう姿勢とか爆発力とか、全体的なヴィジュアルとかも含めて強烈なパワーが必要なんだって。そのパワーを、僕は一周してパンク・ロックに見い出したんですよ。この5年の間に能楽とかも聴きまくって、日本の音楽を勉強して生まれた難波章浩としての〈土着感〉が、強烈に好きだったパンク・ロックと融合したんです」。

 そうして形になったULTRA BRAiNのサウンドのミックスを手掛けたのは、アーケイド・ファイアやM.I.A.といった「いま強烈にトップな音!」を生み出しているロンドンのケイヴメン。沖縄でレコーディングされ、ロンドンで仕上げられたこのたびのファースト・アルバム『NEO PUNK』には、破壊的なテンションそのものが脳内で暴れ回っているような“DRILL MAN”や“VIS”、テクノロジーを駆使したデジタル音がとてつもない興奮を誘う“GHOST BUSTERZ”や“HEY! PUB ROCKERS”といったライヴ仕様のナンバーに加え、宇宙的な拡がりを感じさせるような穏やかなインストの“BLIND TOUCH(IRREGULAR HEART BEAT)”など、自由奔放な全13曲が収録されている。

「ハイスタの残像みたいなものは完全に0%だよね。同じタイプのことを続けるのはラモーンズだけでいい(笑)。パンク・ロックは大好きだけど、そこは成長と共に切り替えて、もっとネオく……〈ネオいもの〉を発信したいなって思うんですよ。5年間沖縄に住んだ僕というレシーヴァーがキャッチしたものを思いっきり爆発させて、国籍とかジャンルとかいうくだらない〈音楽の垣根〉を壊したいし、僕のメロディーが持ってるオリエンタルなムード――協調性とか優しさを持った和のムードを世界に向けて発信したい。使命感とかじゃないけど、いろんな国境や境界を突破していくことが僕らの役割なのかなって思ってるんで」。

PROFILE

ULTRA BRAiN
TYUNK BRAiNこと難波章浩(ベース/ヴォーカル)、DJ BRAiN、GABY BRAiN、GENTA BRAiN、GON BRAiNというULTRA BRAIN CORPORATIONのスタッフから成る5人組。2005年に当時TYUNKとして活動していた難波を中心に結成され、同年9月から沖縄とロンドンでアルバムのレコーディングを開始。TV番組への出演や〈ブレイン君〉というイメージ・キャラクターを用いたコンセプトなどでも話題を呼ぶ。2006年2月にデビューEP『GHOST BUSTERZ』をリリース。その表題曲がTVアニメ「MUSASHI」の主題歌に決定したり、TYUNK BRAiNの〈PUNKSPRING 2006〉への参加などでも注目を集めるなか、ファースト・アルバム『NEO PUNK』(V2)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年04月06日 23:00

ソース: 『bounce』 274号(2006/3/25)

文/山田 邦子