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〈爽快〉という言葉がまさにピッタリ。それでいて毒にも薬にもならずに耳を通り過ぎる音ではない。運動部ではなく文化部が似合いそうな、この笑顔の向こうに底知れぬ闇が広がっているかのような、ディレイズの持つ爽快さはずっしりとした奥行きを感じさせるのだからおもしろい。つまり、ある意味恐ろしい?

 もともと彼らがデビューしたのは、ガレージ・リヴァイヴァルが吹き荒れる2003年。そんな流行に背を向けるかのようにエヴァーグリーンなネオアコ・ポップを鳴らしてみせる根性もたまらなかったが、約3年ぶりとなるセカンド・アルバム『You See Colours』ではさらに時代に背を向けている。ここにある音は爽快なエレクトロニック・ギター・ポップ。しかしながら、ニューウェイヴではない。あえて言うならグラスゴーの系譜(南部のサウザンプトン出身だけど)やネオアコ直系を思わせる極上の美メロに、エフェクトとしてのドラム・ループやシンセの音がごく自然に乗っかることで、なんとも言えぬ〈アナザー・ワールド感〉を生み出しているというか……。何度でも現実逃避のトリップができるんです、この一枚で!

「ガレージ・ロック・バンドは掃いて捨てるほどいるし、サウンド的にも似たり寄ったり。俺たちだったらそれにシンセとエレクトロニクスを加えて新しいサウンドを作り出すのにな。残念ながらいまの時代には同じようなバンド・サウンドが溢れかえっているけど、俺たちはそういう一括りにされてしまうような音にはまったく興味ないね」。

 取材に応えてくれたアーロン・ギルバート(以下同)が、今作でのサウンドの変化のキーマンだ。兄のグレッグ・ギルバートを中心とするバンドに彼が加入した時には、デビュー・アルバム『Faded Seaside Glamor』の収録曲はほぼ完成していたのだとか。というわけで、アーロンが本格的に曲作りに参加するようになったのはそれ以降のこと。もっとも、アーロンが管理していた新曲のマスターテープを紛失したことで、今回の制作には予定していた倍の日数がかかってしまったが(すべて新たに書き下ろしたらしい)、待った甲斐のある作品だとファンとしても胸を張りたい。

「俺はループを基に曲作りをする場合が多いんだ。でもそれをメンバーに聴かせてジャム・セッションを始めても、それだけじゃ曲はまとまらない。ダンス・ミュージックを作っている場合は、それだけで事が足りるんだけどね。ダンス・ミュージックは曲が長いし、繰り返しが多いだろ? ところがポップやロックの構成はそれとはまったく違うから、その点がいちばん苦労するかな。でも、そこらへんも少しずつ処理できるようになっているよ」。

 できることの幅が広がったことで、彼らのイメージする世界観はより正確な形でサウンドに反映された。だからこそ、カラフルなポップ・チューンにどこか冷静な状況判断に基づいた目線の歌詞が乗るあたりは、むしろ前作となにひとつ変わっていない。軸の部分は変えるつもりがないということは、次の発言からもあきらかだ。

「なにしろ、俺たちはメロディー重視のバンドだからね。空まで高く舞い上がるようなコーラスをめざしているんだ。(今作の音は)めざすべきところに向かっただけさ」。

 そういえば以前にUKで観た彼らのライヴでは、驚くべきことに観客のほとんどが男性だった。

「確かに男性ファンが多いね。スキンヘッドとか。泣きながらライヴ会場から去る観客を何度も見たよ。嬉しくなるね。だって俺自身、常に音楽からは感動を求めてるし、感動がないのなら聴かないほうがマシだから」。

 エヴァーグリーンな極上のメロディーに合わせてモッシュやクラウド・サーフが沸き起こる――そんなバンドなのですよ、この4人組は!

PROFILE

ディレイズ
グレッグ・ギルバート(ヴォーカル/ギター)、アーロン・ギルバート(ヴォーカル/キーボード)、ロウリー(ドラムス)、コリン・フォックス(ベース)から成る4人組。96年頃にUKはサウザンプトンにて土台となるバンドを結成。2001年にアーロンが加入して現在のバンド名に改名する。2002年にラフ・トレードと契約し、2003年4月にシングル“Nearer Than Heaven”でデビューを果たす。同年7月にリリースしたシングル“Hey Girl”がUKチャートTOP40入りを記録。2004年1月にファースト・アルバム『Faded Seaside Glamor』をリリースし、同年には初の来日公演を行う。4月12日にセカンド・アルバム『You See Colours』(Rough Trade/東芝EMI)の日本盤をリリースする。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年04月13日 00:00

更新: 2006年04月13日 20:54

ソース: 『bounce』 274号(2006/3/25)

文/妹沢 奈美