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インタビュー

Dem Franchize Boyz


 バディ、ジザル・マン、パーレイ、ピンピンというアトランタ出身の4人から成るラップ・グループ、デム・フランチャイズ・ボーイズ(以下DFB)。“I Think They Like Me(So So Def Remix)”の一発ヒットで躍り出た新人、と思われるかもしれないが、2004年の“White Tee”がスマッシュ・ヒットを記録し、すでにメジャー・デビューも果たしていたことは意外と知られていない。前作『Dem Franchize Boyz』の成功がジャーメイン・デュプリの目に留まり、ソー・ソー・デフに移籍してのリリースとなったニュー・アルバム『On Top Of Our Game』は、早くも前作を上回る成功を収めている。

 今回のブレイクのきっかけとなった前述の“I Think They Like Me(So So Def Remix)”は、DFBを語るのに適した特徴を持つヒット曲だ。ヴォーカル・フックを最大限に活かし、ミニマルで耳に残る電子音が特徴の〈スナップス〉と呼ばれる新しいサウンドがDFBの特徴であり、電子音の鳴りの豪快さが目立つ〈クランク〉とは微妙に異なるアプローチだ。トラックも手掛けるピンピンはその特徴をこう説明する。

「よりソウルフルなグッディ・モブというか、スムーズで肩の力を抜いたクランクみたいなもんさ。誰もフロアにドリンクをこぼさないような感じのビートだね。俺はこれまでに出てきたあらゆるアーティストやプロデューサーにインスパイアされている。マニー・フレッシュ、ドクター・ドレー、カニエ・ウェスト……」(ピンピン)。

 確かに〈スナップス〉は、トラックそのものに爆発力があるというわけではなく、要所での一音を強調し、集団MCによるフックで全体のバランスを保ったスマートなクランク・ミュージックという印象だ。そして、快楽に偏重しないのはトラックだけではない。ラッパーたちのリリックにもコンシャスな部分が感じられる。

「俺たちの曲はどれも現実のある側面を描いたものなんだ。どの曲でも何か特定の内容を伝えようとしている。ただペラペラとまくしたてるだけのために曲を書くことは絶対にないよ。言葉のひとつひとつが俺たちの本音から出てるんだ」(パーレイ)。

「偉大なリリシストたちの仲間入りをしようと日々努力しているんだ。俺たちもアトランタ出身の伝説的なグループのひとつになろうとしている。それは俺たちが真実を語っているからさ。真実は人気の源だし、真実は人を自由にする。大事なのはリアルさだ」(バディ)。

 集団MCの強味を活かしたフックや、クランクを下地にしたフロア向けのリズミカルなトラックは、どこを切っても南部産らしいといえば南部産らしい。だが、聴くほどにDFBのそれは画一的な南部のイメージとはかけ離れた、新しくオリジナルなレペゼン・サウスの音楽だということに気付くはずだ。ストリップ・バーでかかるようなパーティー・シットではなく、独創的なサウンドに乗せてウェストサイド・アトランタのリアルな生活を描いたDFBの革新的な音楽性は、これまでに刷り込まれた南部マナーへの先入観によって見落とされてしまうかもしれない。だが、そのマナーも踏まえたうえでしっかりと提示された彼らの実力とポテンシャルは、南部産のヒップホップが単なる消費物に止まらず、極めて意識の高い音楽的なものでもありうることを証明している。「俺たちは本物のホーム・ボーイで、これからもずっといっしょにやっていくよ」(ピンピン)という自然体な気負いのなさから、今後もマイペースなヒットが生まれていくことだろう。

PROFILE

デム・フランチャイズ・ボーイズ
ピンピン(MC/トラックメイカー)、パーレイ(MC/トラックメイカー)、ジザル・マン(MC)、バディ(MC)から成るアトランタ出身のラップ・グループ。4人が通っていた高校で結成され、地元を中心に活動を開始。ストリート・アルバムやミックステープのリリースを重ねながら徐々に評判を高め、2004年にアルバム『Dem Franchize Boyz』でユニバーサルからメジャー・デビュー。同作からのシングル“White Tee”がヒットを記録するなか、2005年にソー・ソー・デフと契約。移籍後第1弾シングルとなる“I Think They Like Me(So So Def Remix)”がロング・ヒットを記録するなか、このたびニュー・アルバム『On Top Of Our Game』(So So Def/Virgin/東芝EMI)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年04月20日 00:00

更新: 2006年04月20日 18:29

ソース: 『bounce』 274号(2006/3/25)

文/高橋 荒太郎