JHELISA
〈ソウル〉をキーワードに世界を駆け巡る才女が、真にプログレッシヴな傑作をリリース!!
米ミシシッピ州ジャクソン出身ながら、「音楽的に自由で実験的」という理由で英ロンドンに身を置いていたジェリーサは、90年代初頭のソウル・ファミリー・センセーションでの活動を経て、94年にドラドから『Galactica Rush』でソロ・デビュー。従姉妹であるカーリーン・アンダーソンの向こうを張るような鋭くディープな歌&音世界を繰り広げ、続く97年の『Language Electric』では大きな話題をさらった。以降はアルバム発表こそなかったが、この9年の間にはダ・ラータやマッシヴ・アタック、チャカ・カーン、ブライアン・フェリー、コートニー・パインらと共演し、インフラコムの〈re:jazz〉プロジェクトにも参加。決して沈黙していたわけではなかった。
「南アフリカ、ブラジル、NYへ旅もして、いま、これまでの旅で得たものを届けようとしているの」。
そこで届けられたのが、母国に帰還してのニュー・アルバム『A Primitive Guide To“Being There”』だ。当初はニューオーリンズの文化をテーマに制作を始めたが、同地に住まいを移していたジェリーサも昨年8月のハリケーンで被災。これはその苦難を乗り越えての作品となる。とはいえ、今作が被災体験による感傷をウリにしたような作品でないことは、公民権運動のアンセムになった伝統曲をグローバルな視点で再構築した“Freedom's Land”などからもしっかりと伝わってくる。
「私の曾祖父/曾祖母の出身地でもあるニューオーリンズはアメリカで最強の音楽遺産があって、世界でもっとも熱い場所のひとつよ。私はそこで精神補給をしたかった。そうしてニューオーリンズのミュージシャンが演奏した“Freedom's Land”で、100年以上を経たタイムレスなフレーズにモダンな歌詞を加えて、ゴスペルやブルースの伝統スタイルで歌えたのよ」。
ニューオーリンズのミュージシャンの中には、ダーティ・ダズン・ブラス・バンドのテレンス・ヒギンズ(ドラムス)や、ノー・リミットの裏方でもあったベース・ヘヴィー(ベース)も含まれ、それらの面々をプロデューサーであるラージ・グプタガが繋いだことで、アルバムにはエキゾティックな薫りと、ある種の実験的要素が顔を覗かせる。
「冒険的、探求的であることは私の本質。不安になるかもしれない未知への方向へ自身を突き進ませていくことが大好きなの。新鮮でハーモニックな鼓動を感じ取ることができたら、ドラッグなんていらないわ!」。
そして、「次は日本に住むかも」と真顔で答える彼女。ジェリーサの音楽探求の旅に終わりはない。
▼関連盤を紹介。
ジェリーサの97年作『Language Electric』(Dorado)