The Zutons
あの奇天烈雑食バンドがスケールアップしたサウンドを携えて、次なる一手を打つ!
どうしてズートンズのデビュー・アルバム『Who Killed.....The Zutons?』は、UKだけでも70万枚を超える大ヒットを遂げることができたのか。同じ雑食系でジャンル&歴史横断のミクスチャー・サウンドでありながら、同郷の先輩格であるコーラルの影に隠れてしまうことなくきちんと浮上し、人気も評価もしっかりと広がっていったのか。さまざまな理由はあるのだろうが、彼らの持つ独特のすっとぼけた〈軽さ〉が影響したのではないかと私は個人的に思っている。音を詰め込みすぎることなくロックンロールやソウル、ファンクを呑み込んだあたりもそうだし、どうして〈ゾンビ・メイクで写真撮ってるの?〉みたいな理解不能さが重層的に良い意味での〈軽さ〉をもたらした。だからこそ、セカンド・アルバム『Tired Of Hangin' Around』での本格志向には、むしろビックリさせられたのだ。すべての楽器が有機的に鳴っていて、耳を澄ますとファンクは徹底的にファンキーで、ソウルはどこまでもソウルフル。でも、それがちゃんと心地良いポップさとして成立している。ちなみに紅一点のアビ・ハーディング(サックス/ヴォーカル:以下同)は、今作とデビュー作とを比較してこんなふうに語っている。
「サウンド自体はそこまでデビュー・アルバムと変わらないし、誰が聴いても〈ズートンズだ!〉ってわかると思う。だけどね、全体的に成長したと思うの。バンドとは常にいっしょにプレイしてきたし、ツアーも回ってるから、演奏も上達して自然と前進したんだと思う。そうね、もちろんディテールにはこだわってるわ。常にベストのモノを作るように心掛けているし、全曲の細部まで気を配ったし」。
いやいや、ご謙遜を。サウンドはかなりダイナミックでポップになりましたよ。でも一方でアビちゃんの言うとおり、根っこにあるものは変わっていない。つまり流行に囚われず、音を詰め込みすぎることもしない。彼らの変化についてより突っ込んで訊いてみたところ、どうやらその理由はレコーディング方法にあったよう。
「今作では可能な限り全員同時に演奏して、その中のベストなテイクを選んでいったの。サックスのほとんどは、そんなみんなとのライヴ・テイクから選んだものよ。ギターもそんな感じだったわね。とにかくその生っぽさに気を配ったところが新鮮だったわ」。
サイケさを減らしてでもライヴの躍動感とポップさを音に封じ込める――そんな判断が今作での勝利をもたらしたのだ。