インタビュー

Tool

5年ぶりに届けられたヤツらの新作は……とにかく右脳で聴きなさい!


 おどろおどろしいまでにダークでディープで、奇怪にして複雑で難解──そんなとてつもないエネルギーとスケール感に貫かれた比類なきサウンドで、ヘヴィー・ロックの概念をブチ壊し、唯一無二のポジションを確立したモンスター・バンド、トゥール。全米チャート初登場No.1をマークし、ここ日本でもその名を広く知らしめた前作『Lateralus』から5年、ついにニュー・アルバム『10,000 Days』が完成した。

「まず、リスナーには自分の耳で聴いて、感じてもらいたい。考える前に右脳でね。考えたり、書かれた文章を読むというのは、人間の左脳が司っている営みなんだが、直感による感情を呼び起こすのは右脳なんだ。リスナーにはぜひ、地図のないまっさらな状態でアルバムを体験してほしい。オレはイタリア語もドイツ語も話せないが、オペラやクラシック音楽が好きでよく聴く。すると歌われている言葉の意味がわからなくても、感情は伝わってくる。つまり、音楽は考えなくても感じることができるものだということだ。そしていったんアルバムを体験してもらった後に、そのフィジカルな反動として、さらにいろいろなことを感じてほしいな」(メイナード・ジェイムス・キーナン、ヴォーカル)。

 インタヴューには応じてくれたものの、作品の内容については言及しないというスタンスは不変。瞬きすらしないのではないかと思われる能面のような表情で、スキンヘッドのフロントマンはただ「感じろ」と言う。

 タイトルに込められた意味や想いは知る由もないが、そのサウンドは驚異、いや脅威である。電光石火の如きギターが炸裂し、雷雨の轟音が静寂を引き裂き、地鳴りのようなビートが激しく揺さぶり、狂気の絶叫とデス声の咆哮が襲い掛かり、そして祈りのように荘厳で、楽園から聴こえてきたかのように美しいメロディーが甘美なカタルシスへと導いていく。

「これは決まった道のない旅路なんだ。リスナーはそのなかで大いに迷ってほしい。A地点からB地点に直線で行くのではなく、いろいろな小道に外れていってほしいね」(ダニー・ケアリー、ドラムス)。

「でもオレは、誰かがこのアルバムで踊ってる姿を見てみたいぜ(笑)」(ジャスティン・チャンセラー、ベース)。

▼トゥールの作品を紹介

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年05月11日 00:00

更新: 2006年05月11日 15:21

ソース: 『bounce』 275号(2006/4/25)

文/鈴木 宏和