こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

Krystal Meyers


 サラサラのロングヘアーにキラキラと輝くミステリアスな瞳。ギターを抱えて全曲自分で作詞・作曲を手掛ける17歳。クリスタル・マイヤーズを見ていると、現れるべくして現れたガールズ・ロック・クイーンなのだと頷かずにはいられない。ファースト・アルバム『Krystal Meyers』に付けられたコピーは〈絶対自分主義〉。このポップに弾けたキッパリ感に、アヴリル・ラヴィーンのデビュー当時を思い出す人も多いだろう。加えて、アヴリルの作品でマトリックスと共にプロダクションに携わったチーム、ウイザーズ・オブ・オズも関わっているときた。クリスタル本人はアヴリル先輩について、こんなふうに語ってくれた。

「えぇ、アヴリルとは比較され続けているわよね。それは私たちがふたりともエッジーなポップ・ロックを演奏する若手の女性ミュージシャンだからじゃないかしら。当初は誰かと比べられるなんてちょっとイヤだったわ。だってアーティストは自分自身としてみんなに知られたいと望んでいるから。でもしばらくして気付いたの。彼女は行動力もあって、CDを何百万枚もヒットさせた驚異的な人なんだって」。

 アルバムに付けられたコピー〈絶対自分主義〉は、ファースト・シングル“Anticonformity”のテーマを指している。そこに込められたのは、〈他人に流されるな〉というメッセージ。同曲はクリスタルが中学時代に友人といっしょに書いた曲が下敷きとなっている。

「学校ではいつもみんなが他人からどう思われるかってことばかり気にしていた。この曲は他人の意見に左右されるのではなく、自分らしくあろうということを歌っている。他人がなってほしい人間になるのではなく、自分の心に従うの。だから〈アンチ服従〉というわけよ」。

〈アンチ〉という響きからアヴリルみたいなツッパリ系を想像するかもしれないが、クリスタルの歌にはアヴリルのような苛立ちや葛藤、焦燥感は見当たらない。挫けたり失敗することはあっても、敬虔なクリスチャンである彼女は常にポジティヴで真っ直ぐな視線を忘れない。

「高校にはドラッグの問題が溢れていたわ。たくさんの友達から勧められもしたけど、私には間違いだとわかっていた。だから私はあえて優等生ぶってると呼ばれるリスクを選んで〈ノー〉って拒否したの。でも結局は誰もそんなこと気にしなかったけど(笑)」。

 そんな彼女のキャラクターや人柄は、先日の来日ショウケースからもしっかりと伝わってきた。風邪を引いて体調は最悪だったそうだが、そんなことを微塵も感じさせず、クルクルと身を翻し全力投球している姿はあまりにもピュアで天真爛漫。その屈託のなさに圧倒されてしまった。

「もちろん私だって嫌な気持ちが態度に出たり、過剰に反応してしまうことだってあるわ。ただ常に楽観的な人間だと思っているし、悪い状況にいるより良い状況にいたいと思ってきた。そんなふうに私が育ったのは素晴らしい両親のおかげ。先見の明を持っていたことにもすごく感謝している。たとえふたりにとって私が全然言うことを聞かない娘に映ってたとしてもよ(笑)」。

 確かに優等生かも。だが、彼女の発するメッセージは優等生にも劣等生にも共鳴できれば、学生、OL、近所のおばちゃんにだって頷けるものだ。

「自分のファッションについて、誰かから嫌味を言われたからって、そんなの気にすることないの。自分が好きならそれでいい。他人の意見なんて気にすることないわ」。

 シンプルだけど、大切な人生教訓。信仰心が厚くポジティヴ志向の塊みたいなクリスタルではあるけれど、意外にもアンチ志向のメッセージと似通っているのはなんだか不思議だ。メビウスの輪みたいに表裏一体ってことなのかもしれない。

PROFILE

クリスタル・マイヤーズ
88年7月31日生まれ。カリフォルニア出身で、現在はテネシー州フランクリンに在住するシンガー。10歳の頃から曲を作りはじめ、13歳の時にアコースティック・ギターを手に取る。ジュニア・ハイスクール時代にバンドを結成し、ヴォーカルを担当。その時に書いた“Anticonformity”が地元のベネフィットCDに収録されたことをきっかけに、エッセンシャルと契約。2005年に入ってキラーズやウィーザーのオープニング・アクトに抜擢される。同年7月にはアヴリル・ラヴィーンなどを手掛けるウィザーズ・オブ・オズをプロデューサーに迎えて、ファースト・アルバム『Krystal Meyers』(Essential/BMG JAPAN)を発表。このたびその日本盤がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年06月01日 00:00

更新: 2006年06月08日 20:07

ソース: 『bounce』 276号(2006/5/25)

文/村上 ひさし