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インタビュー

TOWERS OF LONDON


 確かにルックスはアレだが、人間はやっぱり見かけによらない。なにしろ、タワーズ・オブ・ロンドンのロックンロールへのアティテュードはまったくもって正しいのだから。なぜかって? 今回取材したフロントマンのドニー・トゥレット(発言、以下同)に〈あなたの考える理想的なロックンロール・スター像は?〉と訊いてみたら、こんな応えが戻ってきた。

「俺が憧れているのはジョン・レノン、リアム・ギャラガーとノエル・ギャラガー、ジョニー・ロットン、エルヴィス・プレスリー……それくらいだな。俺は彼らのアティテュードが好きなんだ。世の中にはそんなにたくさんのスターがいるわけじゃない。だけど彼らは本当のスターだからね。彼らは揃って反逆的なところがあるし」。

 いまだから告白するが、彼らのシングルなどを聴いて、とってもトンチキなバンドだと私は思っていた。しかし、これほど正しい〈ロックンロール観〉を持つヤツらが、ついに完成させたファースト・アルバムに『Blood, Sweat & Towers』なんてトホホ100乗のようなタイトルを付けていても、いやもう、アティテュードと音楽が正しいのだから文句ありません。すんません、みたいな気分です。

 なにしろこのアルバム、〈勢いとメロディーで一発勝負!〉という部分も残しているけれど、彼らの音楽性が実はもっと多面的であることだってちゃんと伝えている。たとえば“King”は、ヴァーヴの“Bitter Sweet Symphony”を手掛けたユース(元キリング・ジョーク)がプロデュースしているのだが、見事なオーケストラ・サウンドを使って壮大さも含んだ曲に仕上がっているし、“Fuck It Up”のアコースティック・ヴァージョンは、このバンドの持つ繊細な歌心をきっちり表面化させている。いやはや、目からウロコです。

「俺たちさぁ、最初の頃はかなり誤解されていたと思うんだよ。外見だけで音までコキ下ろすような人たちもずいぶんいたし。誰も……特にUKでは、俺らがこんなに凄いアルバムを出すなんて予測しなかったと思うよ。だからきっとアルバムを聴いたらみんなショックを受けるんだろうな(笑)。〈俺たちは外見だけがカッコ良いバンドじゃないんだ〉ってことを証明してやったんだ!」。

 ん!? 〈外見だけがカッコ良いバンド〉って、それはつまりどういうこと?

「いや、〈カッコ良い〉とか言っちゃった(笑)。べつにカッコ悪くても、俺は全然気にしないけど……とにかく俺たちは、確かに誤解されているよ。俺たちをバカだと思っている人もいる。けど、俺らはバカじゃないし、意見もあれば、こうやって素晴らしい曲を書くことだってできるんだ」。

 そういった意味でこのアルバムは、昨年のシングル・デビュー以来彼らを取り巻いていた〈アホちゃうか〉という評判への最大の復讐を遂げたことになる。それでいて、今後も逆立った長髪やシャツに(時には自身のボディーにも)文字をペイントするスタイルは続けていく模様だ。そう、それこそ彼らのアティテュード。うん、なんだかむちゃくちゃカッコ良いぞ。

 最後にやっぱり訊きたい。デビュー作の完成記念として、シャツにはどんな文字をペイントしますか?

「そうだなあ(笑)。〈Thanks A Fuck To That〉(=いろいろどうも)かな。時間はかかったけれど、いちばん大事なことは自分たちが満足しているということだと思うんだ。俺は満足しているし。10年かかっても自分たちが満足できさえすればいい、そこが重要なんだ」。

 いや10年かかってませんから、デビューからたかだか1年ですから。ツッコミどころ満載なのも、彼らがロックンロール・スターである証拠なのかもしれない。

PROFILE

タワーズ・オブ・ロンドン
ドニー・トゥレット(ヴォーカル)、ダーク・トゥレット(ギター)、ザ・レヴ(ギター)、トミー・ブルネット(ベース)、スネル(ドラムス)から成る5人組。トゥレット兄弟の呼びかけにより、2003年にロンドンで結成。地元でのライヴ・パフォーマンスが噂を呼んで、2004年にTVTと契約。2005年3月にシングル“On A Noose”でデビュー。同年8月には〈サマソニ〉にて初の来日公演を行う。2005年11月にリリースしたサード・シングル“How Rude She Was”がヒットを記録。2006年に入りNMEの〈クール・リスト〉にドニーが名前を連ねるなどさらなる話題を集めるなか、ファースト・アルバム『Blood, Sweat & Towers』(TVT/ビクター)を5月31日にリリースする。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年06月08日 14:00

更新: 2006年06月08日 20:07

ソース: 『bounce』 276号(2006/5/25)

文/妹沢 奈美