インタビュー

Hands of Creation

自然と顔もほころぶ至福のオーガニック・サウンドを堪能しよう!


 まったく新しく、でもどこか懐かしくもある音楽――ボサノヴァなどのブラジル音楽やレゲエ、フォークなど、多様なバックグラウンドを持つメンバーから成るHands of Creation。ブラジル音楽をベースに活動するバンド=Bophanaの小池龍平が、同じくブラジル音楽主体のバンド=BalancaのBIC、ヒップホップもこなすドラマー、小川岳史、そしてマルチ弦楽器奏者、高田漣といった名手たちを呼び集めて結成された彼らのライヴを初めて観た時、演奏をしていないメンバーが演奏中のメンバーを楽しそうに眺める姿が印象的だった。

「自分の弾いてない曲がそれぞれ好きなんですよ。お互いにない要素がおもしろくて」(高田漣、ギター)。

「(演奏していない曲も)気持ちいい! でも頭の中では(パーカッションが)鳴ってたりもして……」(小川岳史、パーカッション)。

「で、たまに実際に演奏しちゃうんだよね(笑)」(BIC、パーカッション)。

 小池のオリジナル曲をはじめ、ボブ・マーリーやニール・ヤングのカヴァーを収録したデビュー・アルバム『Hands of Creation』。ギターの優しい調べとオーガニックなリズム隊が織り成すアンサンブルを、小池のシルキーなヴォーカルが包み込む。穏やかな情感に彩られた楽曲たちは、同時に彼らが取り組んできた音楽的実験の賜物でもある。

「曲ごとにイメージは違うんですが、オリジナルに関してはブラジル音楽のスタイルを意識した感じではなく、自然に浮かんだ音でギターを弾いています」(小池龍平、ヴォーカル/ギター)。

「実験というよりは、子供の泥遊びみたいな感じですね。みんなで泥を混ぜ合わせてみたら、ある時急に煙が出てきた、みたいな……(笑)」(高田)。

 各人のルーツを押し付け合うことなく、音楽を奏でる無垢な喜びを探し求める彼らの旅――その軌跡から切り取られた本作は、あらゆる聴き手の心に作用するであろう普遍的な魅力に満ち溢れている。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年07月06日 23:00

ソース: 『bounce』 277号(2006/6/25)

文/牛島 絢也