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インタビュー

AK'SENT


「私の作品は、特に女の子が共感してくれる内容に仕上がっていると思うの。きっと〈私も同じようなことがあったわ〉とか〈経験したことはないけど、言っていることはすごくよくわかる〉って思ってもらえるんじゃないかな」。

 ビーニ・マンをフィーチャーしたシングル“Zingy”でデビューした小さなパワフル・ガール、アクセント。この曲でも〈レディース! みんなどこにいるの?〉と呼びかける現在19歳の彼女だが、その登場はまさに〈彗星の如く〉という形容が似合うものだった。「16歳になったらレコード契約をして……と考えていたんだけど、本当にそのとおりになったわね。私のことを〈シンデレラ・ストーリー〉だという人もいるのよ」なんてサラリと言ってのけてはいるが、彼女は決して作られたアイドルではない。確かにルックスも超カワイイだけにそういった目で見られることもあるだろうが、ファースト・アルバム『International』で確認できるキレの良いフロウや、多彩なトラックへの順応性、そしてポジティヴなメッセージが込められたリリックを聴けば、そのスキルの高さがわかるはずだ。

「リリックは15歳の頃から書いていたわ。苦労をしてきたことや、音楽のキャリアを積みながらも私生活を守ること、家族のこと、それに友達が経験した悩みなんかをね」。

 ラッパーになることを決意したのは13歳の時だという。その後は幼馴染みとR&Bグループを組むなど、地道な活動をしてきた。彼女の言う〈苦労〉とは、そういった過去の音楽活動や、ラッパーだった父親をギャングの銃撃戦で亡くしたこと、それに高い志をキープするがゆえの葛藤や障害などを指すのだろう。だが彼女はこうも言う。

「私にとって重要なのは、いろいろ大変だったことよりも、それを〈乗り越えた〉ということ。具体的にどういうことがあったかを話すのはネガティヴだわ。こうして健康で活動していることが重要で、そういうことを音楽を通じて伝えたいの」。

 この真のポジティヴさこそが、彼女の最大の魅力だろう。男権的なヒップホップの世界においても、お互いを尊重し合い、女性同士協力していこう……今作で彼女がもっとも伝えたいのは、そういう意味での〈ガール・パワー〉なのだ。

「〈Bitch〉という言葉よりも、人生にはもっと多く曲にできる物事があると思う。そういう言葉を使わなくても楽しい音楽でアルバムを作れるわ。良い音楽をプレイすることが大切なのよ」。

 ところで、アルバムでほとんどの楽曲をプロデュースし、実に幅広いサウンドを操っているジャガーノーツって?

「彼らは男性の2人組で、LAで共通の友人を介して会ったの。当時はフロリダに住んでいたけど、いまは2人ともLA住まいよ。私のラップを聴いて、〈ぜひいっしょにやりたい〉って言ってくれたの。私は彼らにとって最初のメジャー・アーティストなんだけど、私たちなりのサウンドやスタイルをいっしょに築き上げていきたいという話を最初にした。彼ら独特の〈パーカッション・ベース・サウンド〉を私の音楽で世界に広めたいってね。ジャガーノーツのひとりはソロ・アーティストでもあって、いまは自身のアルバム制作に入っているのよ」。

 なるほど、この2人も今後注目を集めそうだ。最後に、彼女の思う魅力的な女性像を訊いてみると……。

「頭が切れて、物事を観察するけれど、ベラベラと話さない女性ね。周りの状況を把握してから必要なことだけを話す、というような人、物静かで優しい話し方をする人は魅力的だと思うわ」。

 それって、アクセントのことじゃない? とにかく、そんな彼女が新たなロール・モデル的存在になるのは、そう遠い未来じゃないはず。彼女の音楽にはそれだけの吸引力が備わっているのだから。

PROFILE

アクセント
本名クリスタル・ジョンソン。87年生まれ、LA出身のMC。4歳の時に父親をギャングスタの抗争で失い、祖父母に育てられるなかでゴスペルに親しむ一方、TLCや2パックに憧れて早くからアーティストを志していた。13歳の頃からキャリアをスタートさせ、いくつかのR&Bグループで活動する。2003年よりソロ・ラッパーに転身し、そのパフォーマンスが評判となって、翌2004年にキャピトルと契約を果たす。今年に入ってビーニ・マンをフィーチャーしたデビュー・シングル“Zingy”をリリース。同曲を手掛けたジャガーノーツや、DJクイック、サム・スニードらとレコーディングを継続し、ファースト・アルバム『International』(Capitol/東芝EMI)を6月28日にリリースする予定。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年07月13日 00:00

更新: 2006年07月13日 20:44

ソース: 『bounce』 277号(2006/6/25)

文/佐藤 ともえ