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インタビュー

SLEEP WALKER

世界を股に掛けて活躍する和製ジャズ・バンドの真打ちが、充実の新作をドロップ


「クラブでライヴをやる時、〈お客さんの足が止まってたらどうしよう〉って思ったこともあったんですけど……。でも、わかったんです。お客さんは踊るのも忘れて聴き入ってたんです。だからそのへんは安心しましたね。〈踊らせなければ〉というのを僕らはもう超えていると思います」(中村雅人、サックス)。

 2000年に“AI-NO-KAWA”を発表して以来、クラブ・シーンを中心に活動するジャズ・バンドとして国内外で高く評価されているSLEEP WALKERが、前作から3年を経てセカンド・アルバム『THE VOYAGE』を完成させた。ライヴでは熱く激しいパフォーマンスを披露している彼らだが、本作に録音された演奏は実に大らかで、アルバム1枚で一編の映画を観ているかのようなイマジネーションを喚起してくれる。それに、表面的な感情の起伏から一歩進んで、リスナーの内なる感情に働きかけるような楽曲が満載で、格段に深みの増した作品集に仕上がっている。

「テーマは〈旅〉ということで、聴いた人がそれぞれのストーリーを描けるような楽曲の配列になってるんじゃないかな、と思いました。それぞれの曲が持っている個性もあるけど、曲と曲との関係っていうのもあるので」(吉澤はじめ、ピアノ)。

 また、新たな試みとしてウェスト・ロンドンの歌姫=ベンベ・セグエが歌う“INTO THE SUN”、そしてスウェーデンのクリエイター、ヒルドのアルバム『Moving On』にも参加もした、ユキミ・ナガノによる“AFLOAT”といったヴォーカル曲の存在も印象深い。

「突拍子もなく〈ヴォーカルが入ってます〉っていう曲にはなっていない、という自負が僕にはあって。われわれのサウンドにカラフルな色を加えてくれるという意味で素晴らしいアーティストばかりだから……。そういう意味では、すごく恵まれてますよね」(吉澤)。

 デビューから6年の月日を経て届いた本作は「現時点での集大成といえるアルバム」(吉澤)であるとも言える。と同時に、彼らのまだ見ぬ目的地への、新たな旅の始まりを告げる象徴なのだろう。

「ライヴを重ねていくと曲の解釈が深くなって、やればやるほど良くなっていく……という音楽を、僕らはやってるんで」(中村)。
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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年08月10日 13:00

更新: 2006年08月10日 23:09

ソース: 『bounce』 278号(2006/7/25)

文/牛島 絢也