インタビュー

Uzi

祝! デビュー10周年!! 節目の年に放つ新作は、彼を取り巻くあらゆるものに対しての愛を臆面もなくラップした大傑作に仕上がった!!


 まるで名言集だ。山嵐とがっちりタッグを組んだ強力なロック・ナンバー“JUMP”では、国民的漫画雑誌「週刊少年ジャンプ」がかつて掲げた〈友情、努力、勝利〉というテーマを見事にラップに昇華。さらに、“WE愛(ウイイレ愛)”や“H.A.I.J.I.N99X”では、ゲームという娯楽に潜む喜怒哀楽を徹底的にリアルに描き出す。はたまた「あしたのジョー」にインスパイアされた“打つべし~明日のために~”では、闘いに賭ける男の生き様の価値を問う――15曲すべてが高く美しい塔の如くそそり立つ、UZIのサード・アルバム『美髯公』。デビュー10周年を飾る名作の誕生だ。

「狭いけど、ハマッた人には突き刺さる曲ばかりだと思う。〈ジャンプ〉もみんな読んでるだろうし、〈ウイニング・イレヴン〉もやってるだろうし、酒だってみんな好きだろうし、歴史も好きでしょ?って、超開き直ってピンポイントで作ってます」。

 ざっと並べると、ゲーム(UZIはプロ・ゲーマーでもあるのだ!)、マンガ、酒、格闘技、歴史、そしてヒップホップ。すべて自分の手と足と指と身体で感じたものを、そのままラップにブチ込むのがUZIの魅力だ。しかも今回は、ラストの“アウトロ”に最高のパンチラインが用意されている――〈愛してるぜ〉。

「前作から今作までの間でいちばん変わったな、って自分でもビックリしてるのはそこ。恥ずかしげも臆面もなく〈愛してるぜ〉って言えるようになったんだよね。この曲は、(スタジオで)歌いながらブースの中で涙が止まらなかった。家族や仲間、すべての人たちに向けた感謝の気持ちです」。

 脇を固める〈援軍〉は、気心の知れた凄腕ばかり。トラックメイカーではLUCHAやINOVADER、DJ OASIS、DJ CELORY、そしてDJ WATARAI。一方、客演ではZEEBRAやAKTION、YOYO-C、さらに48.9(HAB I SCREAM、RINO LATINA II、YOSHI-P DA GAMA)、そして565(妄走族)など豪華な顔ぶれが参戦。異色のディスコ・ナンバー“開放軍 III”など、本人いわく「ヒップホップ・リスナー以外にも裾野を広げた」キャッチーな曲の連打また連打。しかし何よりも、デビューから10年が経ち、いままでで最高の自由を謳歌しているUZIの存在そのものがメッセージなのだ。

「すべては、自分が楽しいと思ったことを楽しみ尽くした結果としてついてきたもの。ヒップホップという文化には〈DIG(掘る)〉という性質があるし、どんどん掘り下げていって、そこで見えた景色がいちばん大切なものだと思う。それをたまたま俺は曲として表現できるから、本当に幸せだと思ってます」。

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掲載: 2006年09月07日 19:00

更新: 2006年09月07日 21:30

ソース: 『bounce』 279号(2006/8/25)

文/宮本 英夫