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インタビュー

FORWARD, RUSSIA!


  ブチ切れまくりのハイテンション・ディスコ・パンク・サウンドで熱い注目を集めている、UKはリーズ出身の4人組=フォワード・ロシアのファースト・アルバム『Give Me A Wall』が日本盤でリリースされた。地元の音楽祭〈Independent Leeds Music Awards〉では大本命のカイザー・チーフスを押さえて、見事〈最優秀ロック・バンド賞〉を獲得した彼ら。ラプチャーとブロック・パーティーが奇跡的な出会いを果たしたかのような躍動するギター・サウンドには、フガジをはじめとするハードコア・バンドからの影響も感じられるが、その音を一言で表現するとなると〈とにかく切ない!〉に尽きるだろう。中心メンバーのウィスカス(以下同)がバンドのコンセプトをこう語ってくれた。

「僕たちにとっていちばん大切なことは、やっぱり〈バンドであること〉かな。さらに、〈バンドとして何でも試すこと〉だ。以前に組んでいたバンドではいつも同じようなスタイルの曲ばかり書いていて、本当に退屈だったんだよね。だからいろんなことを試しながらも、それが最終的にフォワード・ロシアのサウンドになることが重要だと思う。説明しにくいけど、ポップなものであれ、ヘヴィーなものであれ、ダンサブルなものであれ、どれもがフォワード・ロシアのサウンドに仕上がることをめざしているよ」。

 数多くのポスト・パンク・バンドが現れては消えていく現状。だって、2枚目にしてあれだけの大作を完成させたフューチャーヘッズですら正当な評価を得られていないのだ。しかし、そんなシーンの状況に風穴を開けたのが、漲るエネルギーとメランコリーを併せ持った2つのビックリ・マーク。そんな彼らの魅力は、ヘヴィーな曲もダンサブルな曲もすべてを己のカラーに染め上げてしまうメロディーの素晴らしさだろう。

「グッド・メロディーを書くことに僕たちはエネルギーを注いでいるからね。で、そのメロディーとコードから外れた不協和音を並置することが、究極の目的なんだ。まずメロディーが耳に入れば、僕らの曲を聴いてもらうことができる。そうすると、メロディー以外の要素にも耳を傾けてもらえるだろ!? そうした部分をみんなが気に入ってくれるとは思わないけど、その両面を気に入ってくれる人もたくさんいると思うんだ」。

 さて、彼らを語るうえで外せないのがリーズの音楽シーン。ウィスカス自身も運営に携わるダンス・トゥ・ザ・レディオも、この夏にレーベル・コンピ『Dance To The Radio -What We All Want』をリリースしたばかり。そこにはアイ・ライク・トレインやクビチェックといったネクスト・ブレイクが期待されているバンドから、まったくの無名バンドまでが名を連ねていて、現在のリーズ・シーンの充実ぶりを体感できる仕上がりになっている。

「いまのリーズは素晴らしいよ! 良いバンドがたくさん存在しているし、互いに切磋琢磨してるからね。みんなそれぞれ仲が良くて、お互いに助け合ったり、アドヴァイスし合ったり! うん、本当にエキサイティングなシーンが形成されているよ」。

 ちなみにバンド名の由来については、「なんか裏の意味があるんじゃないかって考える人も多いみたいだけど、ただ単に〈フォワード・ロシア〉っていう響きが気に入ったからバンド名にしただけなんだ。2つの単語で前後に〈 !〉って付いていると、とても威圧的でパワフルな感じがしない? 本当にこれが名前の真実だよ。特にロシアに対して特定の親近感を持っているわけじゃないんだ」というテキトーっぷり! だけど、そのサウンドの持つ情熱が聴く者の心を掴むのは、悔しいけれども事実だ。彼らが奏でる愛と青春のポスト・パンクがここ日本でも開花しようとしている。

PROFILE

フォワード・ロシア
トム(ヴォーカル)、ウィスカス(ギター)、ロブ(ベース)、ケイティー(ドラムス)から成る4人組。2004年にリーズで結成。2005年4月にウィスカスが運営するレーベル、ダンス・トゥ・ザ・レディオからデビュー・シングル“Nine”を限定リリース。同年6月、ケイティーが大学を卒業したことを機に本格的なライヴ活動を開始。7月~8月にかけてエディターズとツアーを行ったほか、〈リーズ〉〈レディング〉といった大規模なフェスに出演。2006年の〈Independent Leeds Music Awards〉ではカイザー・チーフスを押さえて〈最優秀ロック・バンド賞〉を受賞。5月にファースト・アルバム『Give Me A Wall』(Dance To The Radio/V2)を発表し、このたびその日本盤がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年09月07日 20:00

更新: 2006年09月07日 21:27

ソース: 『bounce』 279号(2006/8/25)

文/白神 篤史