インタビュー

New Rhodes


〈メディアがこぞって大絶賛!〉とか〈アルバム・デビュー前から絶大な支持を獲得!〉みたいなハイプが踊っていなければ、いまの新人バンドは音楽ファンの目にすら留まらないんじゃないの!?と、ある友人に言われた。確かに、そんな疑問が湧いてしまうほど、最近の新人バンドには誇大なハイプが付きまとっている(実際それによって実力や個性が埋没してしまうアーティストも少なくないほどだ!)。ブリストルから現れた平均年齢23歳のニュー・ローズもその例に漏れず、〈スミスmeetsストロークス〉なる謳い文句でデビュー前からもてはやされてきた。そんな彼らがファースト・アルバム『Songs From Lodge』を携えて、いままさにシーンに殴り込みをかけようとしている。

「ストロークスとの比較に関しては、単なるジャーナリズムの怠慢だと嫌気が差していた時期もあった。懐古的になるけど、多くの若いバンドと同じように彼らからの影響を色濃く受けたことがあるのも事実だけどさ。スミスと比較されるのは……光栄なことだよ(笑)。でも、デビュー・シングルをリリースして周囲からスミスの名前を引き合いに出されるまでは、彼らの音楽をほとんど聴いたことがなかったんだ。もっとも、スミスを改めて聴いた時は、〈どうしてこんなに素晴らしい音楽をこれまで聴いてこなかったんだろう!?〉って後悔したし、いまではメンバー全員が大好きだけどね」(ジェイムス・ウィリアムズ:以下同)。

 本人たちの意思とは裏腹にさまざまなゴシップが先行してしまう現状に、アーティストもうんざりしているようだ。彼の言うとおり、それはメディアの怠慢に他ならない。これらの発言からもニュー・ローズは信用できるバンドだということがわかるだろう。それを踏まえたうえで、彼らが2006年もっとも素晴らしいメロディーを紡いだバンドとして記憶されるであろうことを強調しておきたい。これはハイプなどではなく、数枚のシングルを手にした瞬間から待ちわびていたアルバムが、あまりにも上質な仕上がりだったからである。

「あらゆるメディアからのアプローチを一切寄せ付けなかったんで、プレッシャーはまったくなかったよ。過去にはさまざまな人の意見に振り回されたこともあったけどね。どんな褒め言葉でも俺たちをその気にさせてくれるのは明白だし、仕事をやり終えた後は自分たちの小さな世界に浸っていたいと思うものだから」。

 ソリッドなギター・サウンドに官能的なメロディーを滑らせる――この極めて独創的な質感を持った楽曲のルーツを訊ねてみた。

「専門学校時代にジョー(・ガスコイン)とジャック(・アッシュダウン)はオアシスみたいなスタイルのバンドをやっていたよ。俺はマニック・ストリート・プリーチャーズとプラシーボが合わさったようなバンドで活動していた。いまは精神的、肉体的、そして音楽的にもかなり成長しているけど、ここに辿り着くまではいろんな音楽から影響を受けてきた。メンバーが好きだった音楽もバラバラだったな。俺はクイーンとビートルズに夢中だったし、レディオヘッドは時期を問わず大好き。ジャックはポリスやニック・ドレイクが好きで、ジョーは日本のMELT BANANAをフェイヴァリットに挙げていたよ!」。

 彼の口からMELT BANANAが出てくるとは夢にも思わなかった!

「俺たちのサウンドが独特のUKっぽさを出しているのは、UKロックの他にもいろんな音楽を聴いてきたからさ。レコーディング時の俺たちはまるで小さな女の子みたいに口喧嘩をする。俺たちは全員クリエイティヴだし、サウンドに対して異なったアイデアを持っているからね。だから自分の希望がとおるまではスネてるよ(笑)」。

 あらゆる音楽を採り入れたからこそ、そこに〈独特のUKっぽさ〉が生まれる。一見矛盾しているようにも思えるが、彼らの音には絶対的な説得力が備わっているのだ。それは、狂乱するシーンにおいて自身の立ち位置を冷静に把握できる男たちだからこそ持てるものなのではないだろうか?

PROFILE

ニュー・ローズ
ジェイムス・ウィリアムズ(ヴォーカル/ギター)、ジョー・ガスコイン(ギター)、ジャック・アッシュダウン(ベース)、ステファン・ビショップ(ドラムス)から成る4人組。2003年夏にブリストルで結成。レイザーライトやキラーズなどのサポート・アクトを経て、2004年7月にモシ・モシからシングル“I Wish I Was You”でデビュー。同曲はインディー・チャート初登場7位を記録する。続くセカンド・シングル“You've Given Me Something That I Can't Give Back”、サード・シングル“From The Beginning”も全英チャートTOP40をマーク。このたびレーベル移籍を経て、10月4日にファースト・アルバム『Songs From The Lodge』(Salty Cat/FABTONE)をリリースする予定。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年10月19日 19:00

更新: 2006年10月19日 20:24

ソース: 『bounce』 280号(2006/9/25)

文/冨田 明宏