インタビュー

中塚武

ジャズもハウスも独自のカラフルなセンスでヒップに再構築! 新世代のポップ・マエストロからハッピーな新作が届いたぞ!!


 国内外で活動するバンド=QYPTHONEのメンバー、また数多くのTVCM曲を手掛ける作曲家、さらには自身が主催するイヴェント〈GROOVY SAUCE〉を中心に活動するDJ……と、いくつもの側面を持つアーティスト=中塚武がニュー・アルバム『Girls & Boys』をリリースした。前作『Laughin'』から1年2か月を経て発表された本作は、もはや〈中塚節〉とも言えるグルーヴィーなハウス・チューンも健在ながら、土岐麻子をヴォーカルに迎えたスウィンギーな“Your Voice”や、ヒップスター・イメージ“Make Her Mine”のカヴァーで聴かせるジャズ寄りのアプローチ、さらにブルージーなブレイクビーツが効いた異色のトラック“Giulietta”など、いままで以上にヴァラエティーに富んだサウンドが魅力的だ。

「もともと音楽の趣味は雑食で、モッズやジャズもすごく好きだったんですよ。で、このアルバムを作る前から〈ライヴをやりたいな〉と考えていて、構想としては僕がオルガン弾いて、ウッドベースがいて、ギタリストがいて……、っていう全部木目調の楽器が揃うイメージだったんです。なのでそのスタイルに合う曲を考えるうちに、カヴァーだったり、土岐さんとの曲だったりが生まれてきたという感じですね」。

 そんな新たな一面を披露する一方、中塚の強烈なサウンド・マジックが炸裂してアルバム全体を揺るがすほどのパワーで終盤を演出するのが、名曲“北の国から”のサンバ・ハウス・カヴァーだ。

「以前、DJをやっている友達が東京から北海道に引っ越すっていうんで、餞別代わりに曲を作ろうって話してたら、〈北の国から〉をサンバ・ヴァージョンで!って盛り上がって。で、ちょうど今回の曲作りの時に入ってたスタジオの隣に偶然さだまさしさんがいらしてた時があったんで、すぐ挨拶に行って、カヴァーさせてくれるようお願いしたんです。そしたら快諾していただいて……。さださんのほうもノリノリで〈じゃあタイトルは“南の国から”っていうのは?〉なんて言ってくれたり(笑)」。

 ジャジーなトラックもフロアを揺らすキラー・チューンも、ミニマルなロウビートでさえもすべて1枚のアルバムにまとめ上げる懐の広さと度量。それに加えて、「今回は自分のカラーが出たものをやりたかった」と語る彼の言葉どおり、ほとんどの曲で作詞/ヴォーカルも担当した本作は、より彼の思いが色濃く伝わる内容にもなっている。今年の最重要アルバムのひとつにカウントされること間違いなしのスペシャルな仕上がりを、あなたもぜひ味わってみては?

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年11月16日 22:00

ソース: 『bounce』 281号(2006/10/25)

文/aokinoko